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2015年1月31日 (土)

神学的思考の論理

神学は「矛盾」の基礎の上に築かれる、ということらしい。『神学の思考』(佐藤優・著、平凡社)において、著者はそもそも人間が神について語ることはできない、と繰り返し強調する。

どういうことかというと、無限である神と有限である人間、その差は絶対的であり、人間が神について語ることは原理的に不可能なのである。この「不可能の可能性」に挑むという緊張が、神学的思考の核にあるということだ。

しかし人間はいかにして神を知るのか。人間が思考の中で組み立てた神は、偶像にすぎない。人間の思想は結局、独断論か不可知論となるほかない。神学にとって重要なのは、人間の論理ではなく、神の論理である。神からの働きかけ、つまり啓示に応えることにより、人間は神を知るのである。

人間は神について語ることを止め、神の啓示に虚心坦懐に耳を傾けなければならない。その啓示とは、キリスト教においてはもちろん、イエス・キリストである。人間は、イエス・キリストを通してのみ、神を知ることができる。

イエス・キリストは神と人間をつなぐ唯一の点である。神が人間の救済を目的として具体的な歴史に姿を現すこと、つまり神が人間となり十字架上で死んだことが、原罪を負った人間が救済される根拠となるのである。

ということで、著者はカール・バルト以降のプロテスタント神学に依拠しているらしいのだが、その「弁証法的」な論理の筋道を辿ること自体は結構興味深いものもあるとはいえ、やはり根本的には、イエス・キリストが救世主であるとか、人間は原罪を負っているとかを、自分の人生の問題として受け止めないと、神学の論理に深く入り込むことはできないようだ。

でも、著者の本には、非キリスト教徒である自分も引き込まれる力がある。著者が外交官から事件を経て作家になったのは、まさに「神の思召し」という感じがする。

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