アメリカ建国と「選民思想」
『世界のしくみが見える世界史講義』(茂木誠・著)の「第5章 アメリカ合衆国を理解する」からメモする。
アメリカ独立戦争(1775~83)の中で出されたのが独立宣言です。独立宣言では、「われわれは以下のことを自明の真理と信ずる」として、次のような内容が語られています。「すべての人は平等に作られ、神によって一定の権利を与えられている。その権利というのは生命・自由・幸福の追求である・・・・・・」
宣言に書いてある「すべての人は」という人の中に、黒人と先住民は入ってない。独立宣言で自然権を神に与えられたのは「すべての白人」なのです。
イギリスは国教会ですが、アメリカに渡ったのはイギリス人の中でかなり特殊な人たちです。じつは、アメリカに入植した人たちの多くはカルヴァン派だったのです。
イギリスのカルヴァン派をピューリタンと言いますね。これは「purify(ピュリファイ=清める」から来た言葉で、文字どおり、清らかな禁欲生活をして、一切の邪悪なものを避けていくという考え方の人たちです。それゆえに、自分たちは神によって選ばれた民だという選民意識を強く持っています。自己犠牲の精神と選民思想は表裏一体なのです。
カルヴァンの予定説を思い出してください。神に救われる人間と救われない人間は初めから決まっているのだと。
ここから先住民などの異教徒を排除する論理が出てくる。予定説が人種差別の思想につながってしまっているんですね。
(ピューリタンは)この大陸にキリスト教文明の国を築き、異教徒の野蛮人を追放して「purify」することが、神から受けた使命――マニフェスト・デスティニーである、と考えるのです。
・・・佐藤優も、カルヴァン派がつくった「自分たちは神様に選ばれたピューリタンである」という意識は、ユダヤ教の持っている選民思想とシンクロする、と指摘する。その意味でアメリカ人はユダヤ教にシンパシーを感じやすい、という(「週刊ダイヤモンド」11/15号)。何にせよ、「選民思想」で自己正当化した人間の集団は外から見れば大概、アブナイ人々の集まりだという感じがする。
| 固定リンク
コメント