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2014年6月 3日 (火)

経常収支の赤字、是か非か

経常収支の赤字は良いのか悪いのか、それが問題だ――本日付日経新聞市況欄コラム「大機小機」(「良い経常赤字」と「悪い経常赤字」)の内容をメモする。

経常収支をめぐる議論が騒がしい。「日本の経常赤字が定着するのは、憂うべき事態」なのか。それとも「経常黒字が良くて赤字が悪い、というのは経済理論上ナンセンス」という経済学者の指摘が正しいのか。 

海外の事例。19世紀の米国や英国では長い間、経常収支が赤字だった。カナダは1世紀余り赤字基調、オーストラリアは40年も黒字を記録していない。だが経済は順調に発展し続けた。一方、破綻国家の多くで巨額の経常赤字が観察されている。近年のギリシャはその典型だ。 

どこが違うのか。経常収支の赤字とは、輸出などの稼ぎが輸入代金などの支払額を下回り、資金不足が生じたことを意味する。問題は、この資金不足を穴埋めするファイナンスが経済的混乱なくできるかどうかに尽きる。ここで「良い赤字」か「悪い赤字」かが決まる。 

オーストラリアやカナダは豊富な資源の裏付けで円滑に資本調達ができた。19世紀の米国や英国は成長国家として、資本は安定的に流入し続けた。双子の赤字と騒がれた1980年代米国にも、基軸通貨国という特殊要因があった。 

カギはその国の国家、企業、家計部門への信認である。ギリシャをはじめ歴史上数多くの国家が破綻したのは、対外的信認が失われ、資本流入が途絶えたことによる。 

経済収支は長期的には国内の貯蓄・投資バランスで決まる。貯蓄超過ならば黒字、貯蓄不足になれば経常赤字になる。貯蓄不足が巨額になれば、赤字も資本調達の必要額も巨額になる。対外依存度が高まれば、危機が生まれやすくなる。 

日本は今、二つの貯蓄不足問題を抱えている。一つは巨額の財政赤字。もう一つは人口の高齢化を背景とした家計貯蓄率の急低下である。このまま続けばファイナンスに不安が生じる。経済収支赤字化の足音は、日本が抱える二つの病への警鐘である。

・・・赤字会社も、とりあえず銀行が金を貸してくれる間は倒産しない。乱暴かも知れないが、まあ国家も同じと思っていいんだろう。しかし、日本は資源国でもなければ成長国でもないし、いわんや基軸通貨国でもない。このまま貯蓄不足が深刻になって、対外依存度が高まった時に、日本の信認が長期に亘り維持できるかといえば、何だか心許ない。ならば、経常赤字の是非は自ずと決まるということだろう。

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