なぜ西欧はキリスト教化したか
西欧がキリスト教化した時代背景や理由について、『神学の起源』(深井智朗・著、新教出版社)から、要約する形でメモする。
どうして西ヨーロッパはキリスト教化したのであろうか。一番大きな理由は、経済史家アンリ・ピレンヌが考えたように、地中海地域の覇権をイスラムが奪ったため、キリスト教は中心はローマに残しつつも、その舞台を北へと移したのである。
それではキリスト教はどのようにして西ヨーロッパをキリスト教化したのだろうか。重要な点が二つあるのではないか。ひとつは時間の支配である。キリスト教は、自然の創造者であるこの世を超越した神への信仰を教育した。自然は信仰や畏れの対象から、被造物となった。教会や修道院は、人々の労働や祈りの時間あるいは暦を定め、人々に時間と共に生きることを教えた。
もうひとつは死の支配、あるいは天国の支配と言ってもよい。教会は、天国とこの世を繋ぐ階段は教会だけが管理できることに定めた。この世に生活する人間にとって大切なことは、この教会の教えを守り、死んで天国に行くことであった。死と死後の世界は現代人と違って大変リアルなものであった。
結局教会は死の話をしながら、実際には現世をも支配する絶対的な権力になってゆく。
キリスト教はイエスの神の国の接近という教えからもっとも遠ざかり、この世の支配システムとなった。
・・・それにしても、病、天災、戦争が日常である中で生きた昔の人々は、死後の世界を信じることなしには生きていけなかっただろうと思うと切ない。(日本でも平安・鎌倉期の仏教興隆は似たような事情かと)
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