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2013年5月11日 (土)

「正統と異端」のダイナミズム

ゲルマン人のキリスト教が形成したヨーロッパ文化の根本特徴は、「根拠薄き正統と根拠強き異端との対立」であり、その異端を政治的暴力的に打ち砕くことを正当とする態度なのだ――『栗本慎一郎の全世界史』(技術評論社)からメモする。

ヨーロッパはフランク族が没落した西ローマからアタナシウス派キリスト教(三位一体論が軸)とラテン語を意図的に統合の象徴として受け取った以降、それに敵対する勢力を打倒征服することを正義とした。そしてその正義の浸透には、ひるむことなく暴力(武力)が用いられた。

この三位一体説やカトリック教会による世俗的権威を目的にする各種儀礼に対しては、それは根本的に違うと構造的に否定する者が必ず出る構造があった。要するに、三位一体説では筋が通らないからだ。

神と神の子と聖書の三つが一つだという三位一体論はローマ教会派によって政治的に形成されたのだ。

かくして異端や非主流派が常に存在するという構造がヨーロッパ社会に確立された。つまり、キリスト教アタナシウス派の導入によって出来上がった文化の根源におけるエネルギーの源は異端と正統の対立、あるいは非中心と中心の対立なのである。

ヨーロッパ文化の本当の中心軸は強引な唯一一神教キリスト教とそれにまつろわぬ勢力との対立という構造となった。大きく言えば二重構造である。小さくは異質物が常に存在する構造だ。以降、今日に至るヨーロッパ文化の問題はすべてこの構造によって説明できる。異常なる拡大発展の意欲、敵対する者への異常なる暴力、自分たちと価値観の異なる者への強い関心(反感)、対外交易への意欲などである。

この常時存在する対立が社会にエネルギーを与え、商業を発展させやがて資本を蓄積させた。そして貨幣が支配する世界を強大化したのである。

・・・キリスト教が不安定性を抱えているのは、たとえばイスラームと比べてみれば明らかだろう。最初にムハンマドという預言者にして開祖がいて、その人が書いたコーランという聖典があるイスラーム。それに比べて、キリスト教は聖書(新約)がまとめられたのも、パウロが教義を明確にしたのもイエスの死後であり、長い時間をかけて形成されてきた宗教であるだけに、様々な解釈が現れる余地が大きい。そんな中で、訳の分からない三位一体説を権威主義的に正統教義にしたと。その結果、無理矢理?決めた正統を守るためには、異端や異教への攻撃も過激になっていくと。そんな印象を持つ。

「正統と異端」の原理がダイナミズムを生み出して、社会を発展させる力になったという面も確かにあるんだろう。けど、やっぱりまず思い出されるのは、その暗黒面というか、膨大な犠牲者を生み出した争いや差別の歴史だ。とにかく、ヨーロッパ社会は「正統と異端」を基本原理として組み立てられてきた、と考えていいんだろう。

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