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2013年3月14日 (木)

デフレとインフレ、そして資本主義

本日付日経新聞「経済教室」(デフレの本質、執筆者は岩井克人教授)からメモ。

「インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象である。それは貨幣量が生産量を上回って成長することによってのみ生じるからである」。かつてミルトン・フリードマンが声高に唱えた命題である。だがそれは誤っていた。貨幣成長率と物価上昇率の間に一義的な因果関係がないことは、多くの実証研究が示しており、貨幣数量説は既に学説史上の遺物となっている。

貨幣量の物価への影響を否定しているのではない。貨幣量の変化がインフレやデフレをもたらすとしたら、それは物価の予想に直接的に働きかけるか、個人や企業の支出行動に間接的に影響を与えて、総需要と総供給との間のギャップを拡大するか縮小しなくてはならないのである。いずれにせよ、デフレを引き起こす総需要の総供給以下への落ち込みは、生産の縮小や失業の拡大を伴い、経済を不況にしているはずである。逆にインフレを引き起こす総需要の総供給以上の膨張は、経済を好況にしているはずである。すなわち、デフレは悪、インフレは善の帰結である。

話はここで終わらない。デフレそのものが不況を悪化させ、インフレそのものが好況を促進させる。デフレは個人や企業が抱える金融負債の実質負担を重くし、インフレは軽くする効果を持つからだ。

金融は、アイデアはあるが資金のない個人や企業が、アイデアはないが資金のある個人や企業から資金を借りて投資し、アイデアを設備や組織、技術や製品の形に具体化させる役割を果たす。その意味で、負債こそ革新的なアイデアを現実の利潤へと転化する資本主義のテコにほかならない。

デフレはこの負債の実質額を年々増やしていくことになり、その予想は革新的な活動にブレーキをかける。デフレは不況を悪化させるだけでなく、資本主義を長期的停滞に導く最も確実な道である。
逆にインフレは、負債の実質額を年々軽くすることにより、好況を強めるだけでなく、その予想は革新的な活動を促進する働きをする。

だが、デフレはすべて悪であるが、インフレはすべて善ではない。それは、さらなるインフレを予想させて、インフレをさらに強めるという悪循環に転化する可能性を常に秘めている。その行き着く先であるハイパーインフレこそ、貨幣の存立構造それ自体を崩壊させる最悪の事態である。

しかし、その心配をするのはまだ早い。いまはインフレ基調の確立により総需要が刺激され、日本経済が長期にわたる停滞から解放されることを切に望むだけである。

・・・「ハイパーインフレ到来」を唱える「伝説のディーラー」氏の主張は、どうにも観念的な印象が強くて、理論家である岩井先生の方が現実的な見方をしているような感じ。

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