単なる「歴史好き」が楽しい
『日本人のための世界史入門』(新潮新書)の中で、小谷野敦先生がこんなことを書いているのが目に付いた。
講談社現代新書『神聖ローマ帝国』の著者・菊池良生も、同『ハプスブルク家』以下のハプスブルク・シリーズを書いた江村洋も、歴史学者ではなくドイツ文学者である。なぜかというと、現在の歴史学者は、普通は皇帝や王の研究などしないからである。日本史でも同じことだが、いわゆる歴史に関心を持って歴史学科へ行っても、古文書を読まされるのはもちろん、基本的には民衆史的な、裁判記録などから見る無名の人々の生活の研究をさせられるのだ。
・・・歴史の専門家、研究者のやることは、主に史料の読解である。仕事としては辛気臭い感じだし、職業として取り組める人は限られていると思う。歴史が好きでも、専門家や研究者を目指すのは止めておいた方が無難と言うか、歴史ファンのままでいる方が楽しいんじゃないかな。
例えば、自分の場合は、十字軍の時代に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世という人がいたということを、10年前にNHKの番組で教えられてから、世界史というか主に西洋史への関心が盛り上がっていった。つまり「こんな凄い人がいたんだ」という素朴な驚きが、歴史を学ぶ始まりで、これは割とありがちなパターンじゃないかと思う。歴史ファンならば、専門家の書いた本をいろいろ読みながら、自分が凄いと思った歴史上の人物の「追っかけ」をしてればいいので、それは単純に楽しい。
この本の最初の部分で小谷野先生は、歴史の勉強は「役に立つから」やるというより、「面白いから勉強する、でいいではないか」と言う。そして本の最後に、「一般読書人の歴史の知識はだいたいでいいのである」と述べている。自分も、そういうことだと思う。
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