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2012年11月16日 (金)

日本の構造問題を再確認

今週の「週刊エコノミスト」(11/20号、特集「デフレの真相」)掲載の池尾和人(慶応義塾大学教授)論文からメモ。

本来の意味での「デフレ=持続的な物価下落」は、経済低迷の原因というよりは、結果である。「デフレで経済が低迷している」という言い方をすることもよくあるが、原因と症状を取り違えてはいけない。 

対症療法としての金融緩和はすでに十分に行われており、物価下落が加速するといった事態は回避されている。供給された貨幣が死蔵されてしまって使われようとしないことにこそ、問題の本質がある。したがって、いま必要なのは、対症療法の一層の強化ではなく、後者の問題を解決するための根本治療に取り組むことのはずである。 

1990年代以降、日本経済が長期にわたる低迷を余儀なくされている原因は、大きくは冷戦終了以後の国際経済環境の変化に十分に対応できていないことと、人口動態の問題だと言える。 

冷戦終了の前後から、中国が「世界の工場」として台頭するなど、日本の周辺にも産業化を遂げた諸国が登場するようになった。
新興国向けの製品に関しては、中韓と全く「同じ土俵の上での」競争になってしまう。同じ土俵の上での競争は否応なしにコスト競争となり、この結果、人件費に関してもアジア諸国との
実質的な均等化(日本からみれば、引き下げ)圧力が強く加わるようになっている。
実際に、日本の実質賃金は緩やかに下落する傾向がみられ、このことが多くの人々にデフレ感を抱かせる原因になっているとみられる。
デフレ感の原因となっている実質賃金の下落を止めるためには、日本企業が中韓の一歩先を行くかたちで国際競争力を回復することが不可欠である。
 

また、高齢化が進行し、労働人口が減少しているという人口動態は、日本経済の重荷になっている。こうした中で、財政や社会保障制度の持続可能性が失われてしまっていると多くの人々が判断している。
財政再建や社会保障制度の抜本的な改革は、しばしば長期的な課題だと言
われることがあるが、その道筋がはっきりと示されていないことは、将来に関する不確実性を高めることで、当面の景気にも悪影響を与えていることを認識しなければならない。 

辛気くさい話だが、抜本治療に取り組む以外に経済低迷からの脱却の道はない。

・・・ということではあるのだが、それでも自民党の安倍総裁が「無制限の金融緩和」とかテキトーなことを言ったら、とりあえず為替が円安に振れて株価が上昇したという現実を見ると、まあそれも一つの「対策」かなあと思ったりする。(苦笑)

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