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2012年10月30日 (火)

『ヨーロッパ精神史入門』復刊

おお!『ヨーロッパ精神史入門――カロリング・ルネサンスの残光』が新版になって出てるよ!・・・という何だかマイナーな驚きと喜びを、ただ今感じているところです。哲学者の坂部恵(故人)の書いたこの本の出版は今から15年前、直近は品切れ状態からアマゾンで古本にバカ高い値が付いていたりして、何となく自分もこういう本は増刷しないような気がしていたので、今回「岩波人文書セレクション」の一冊として再刊されたのはホントに意外でした。

さて、この本はとりあえず哲学史の本と言っていいわけだが、基本的な歴史観は古代―中世―近代の教科書的な三分法ではなく、歴史家クルティウスに倣って、古代地中海世界とヨーロッパ世界の二分法を取る。そして中世―近代の間に断絶よりも、連続性を強く見ようとする。これにより、ヨーロッパ世界の「近代」の出発点は、9世紀のカロリング朝まで遡って置かれる。そして当時のカール大帝による学芸の振興、いわゆるカロリング・ルネサンスから「ヨーロッパ世界の哲学」が始まると共に、神学―哲学―自由学芸という学問の階層秩序も形成されて、以後のヨーロッパ精神史の展開は、この階層秩序の変化が大きく作用することになる。

ヨーロッパ精神史には、階層秩序が大きく変化した時代、「大きな切れ目」が二つある。最初は14世紀、次は1770年~1820年。前者においては神学と哲学の間に亀裂が入り、哲学は相対的な自立性を獲得する。後者は哲学と自由学芸の間に亀裂が入り、哲学という母体から個別科学や芸術が独立し始める時代。そして、1960年代から次の大きな切れ目に入っている、というのが著者の見立てだ。

以上のような歴史観をベースに、エリウゲナ、アヴィケンナ、スコトゥス、オッカム、エックハルト、ライプニッツ、クザーヌス、カント・・・さらには現代思想の哲学者たちまでが概観される。基本的に「講義」なので読みやすいとはいえるのだが、何しろ知らない人名多数、さらに「能動知性」やら「共通本性」やら馴染みのない中世哲学用語も出てくるので、内容をまともに理解しようと思ったら大変なことになる本だ、という感じです。(苦笑)

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