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2012年8月23日 (木)

宗教改革という「再形成化」

西洋史において「宗教改革」という出来事は、どのような意味を持っていたのか。『マルティン・ルター ことばに生きた改革者』(徳善義和・著、岩波新書)からメモする。

英語でもドイツ語でも、宗教改革はReformation(リフォーメイション)と呼ばれる。どちらも冠詞がつかず、大文字のRで始めるのは、この出来事に他の何にも代え難い、特別な意味を認めているためであろう。 

リフォーメイションを日本語にするならば、「再形成化」という言葉がふさわしいのではないか。したがって、大文字で始まるReformationは、次のような意味になる。すなわち、それまでキリスト教的一体世界であった西欧が、ルターの始めた運動をきっかけにして細分化し、キリスト教世界であることに変わりはないものの、従来のあり方とは全く別の、多様なキリスト教世界に再形成された、ということである。 

もっと「広い意味」での宗教改革も考えられる。つまり、それまで歴史の底流をなしていた様々な変革の波が、宗教改革をきっかけに合流し、歴史の大きなうねりとなり、西欧社会の全体を巻き込んで、従来と比べて新しい世界、すなわち近代世界を出現させたということである。 

14世紀に始まるルネサンスから、文学や美術、学問の分野で教会からの自立が芽ばえた。さらに宗教改革によって、人間の生の様々な領域で広く脱キリスト教化が進んでいった。絵画や音楽の制作はその好例であろう。
宗教改革は、神聖ローマ皇帝の座がカール5世に引き継がれた時期に始まる。皇帝カール5世は、フランスやオスマン帝国との戦争に明け暮れていたため、ドイツの支配統治における主要な決定は帝国議会に委ねられた。結果、それがルターに宗教改革拡張の好機を与えてしまうことになる。
一方、16世紀初頭は、ヨーロッパにとってもドイツにとっても経済構造の変動期であった。大きくいえば、土地に根ざした農業中心の社会が、貨幣経済にもとづく社会に変化しようとしていた時期である。
 

以上のような社会の様々な方面における変革の波が、やがて宗教改革という大きな歴史のうねりとなって一つに収斂していくのである。

・・・ルターの100年以上前に教会改革を訴えたウィクリフやフスは、異端者として処刑される等の恐ろしく不名誉な扱いを受けた。ルターが処刑されることもなく、聖書のドイツ語訳などの業績を残せたのは、時代が変わっていたからだとしか言いようがない。つまり時代がルターを求めていた。という感じで、16世紀ドイツは面白いのです。

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