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2012年8月 1日 (水)

「長い16世紀」

我らが証券業界出身のエコノミスト水野和夫(埼玉大学客員教授)が、今週の「週刊東洋経済」(8/4号)の特集「読書の技法」の中で、『芸術崇拝の思想』『陸と海と』『地中海』『近代世界システム』『国家は破綻する』など推薦図書15冊を挙げながら、「今起きていることは近代、あるいはキリスト教西欧社会を問い直して初めてその本質をとらえることができる」と述べている。同感。

水野先生は、上記の書物から「蒐集」や「陸(の国)と海(の国)のたたかい」などの概念を援用して、自らの歴史経済分析を展開するのだが、中でも興味深いのは「長い16世紀」という言葉。これはブローデルとウォーラーステイン、師弟関係にある両者が用いた概念で、15世紀後半から17世紀前半までを「16世紀」と見なして、この時代から資本主義とグローバリゼーションが始まったとするもの。水野先生は現在の世界が「近代の終焉」を迎えたと捉えつつ、中世が終わり近代が始まった「長い16世紀」を考えることで、未来への展望を得ようとしている。

さて、この「長い16世紀」、とりあえず「資本主義とグローバリゼーション」を横に置いて、単純にヨーロッパ史の一局面として教科書的に見ても、大航海、ルネサンス、宗教改革と、まさに変革と言うか、新しいものが生み出される非常に興味深い時代。ひとまず「長い16世紀」を、1453年ビザンツ帝国滅亡から、1648年ウェストファリア条約までと区分すれば、特に1517年ルターによる宗教改革の開始以降は、神聖ローマ帝国を主な舞台として、新教と旧教の争いからアウクスブルクの和議を経て、国際戦争に発展した三十年戦争、そして主権国家体制の確立に至る、まさに古い秩序が壊れて新しい秩序の基礎が固まる激動の時代だ。

さらに、この「長い16世紀」を日本史に当てはめてみても面白い。日本の16世紀はもちろん戦国時代。これを前後30年余り広げてみれば、1467年応仁の乱の始まりから、1638年島原の乱の終結まで、こちらも古い秩序が壊れて新しい秩序の基礎が固まるという時代。ヨーロッパとの接点もあり、キリスト教と鉄砲という、ソフトとハード両面から大きな影響を受けた。もちろん日本の場合は資本主義やグローバリゼーションを生み出すことはなかったけど、ヨーロッパ史と日本史の妙な並行関係には興味をかきたてられるものがある。

まあそんなことで、オイラもしばらく「長い16世紀」に思いを巡らせてみようかと。

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