新自由主義から新社民主義へ?
本日付日経新聞・投資財務面コラム「一目均衡」(経済成長のパラダイム転換)は、末村篤・特別編集委員の執筆。以下にメモする。
経済危機が社会不安に発展し、財政と雇用のトレードオフが政治問題化した欧州で、経済成長のパラダイム転換への動きが台頭している。
国際労働機関(ILO)のソマビア事務局長は、本紙への寄稿で世界の成長モデルの変革を訴えた。「労働を生産コストと捉え、競争力と利益を最大化するために、できるだけ低く抑えねばならないと考え、少数者への富の偏在を招いた現在のモデルから、人々の福利増進と格差是正を主目的とし、生み出された良質の仕事の量で成功が測られる異なるタイプのモデルへの転換が必要とされている」という。
過去数十年の経済政策の結果、労働(人間)は商品ではないという基本的な概念が失われ、資本に偏った資本と労働のバランスの回復を目指すものだ。労働の商品化を加速する市場の改革を進めて、成長率をかさ上げするという新自由主義的政策とは対照的な、新社会民主主義の思潮といえる。
民主政治の振り子も揺り戻し始めた。仏大統領選を制したオランド氏は、「60の約束」で生産と雇用と成長を最優先課題に掲げた。
過去10年の富裕層や大企業への税制優遇の見直しを中心とする「正義の改革」と並ぶ公約は、企業を起点とする資本と労働の分配の是正を意図するものだ。
思潮の変化が現実を変えるかどうかは定かでない。
それでも、欧州発の変化は資本主義の自浄能力を示す兆しとして注目に値する。
危機の深化とともに、「むき出しの資本主義」を「人間の顔をした資本主義」に軌道修正するパラダイム転換の可能性も高まる。
・・・新自由主義は様々な言い方で形容されてきた。例えば資本の専制(柄谷行人)、資本の反革命(水野和夫)、資本主義の純粋化(岩井克人)等々。
その新自由主義は、リーマン・ショックで曲がり角を迎えた。それは、アメリカ主導による政治経済のグローバル化が進行した「冷戦後」の終わりという印象もある。
ここからはあらためて「成長」が肝心になる。成長を実現できれば、「新社民主義」は内実の伴うものになるだろうし、それができないのであれば、新自由主義的効率追求の道に戻るほかはないだろう。
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