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2012年3月14日 (水)

「潜在成長率」のおさらい

本日付日経新聞「経済教室」(試練続く中央銀行)の執筆者は池尾和人・慶応義塾大学教授。記事の前半からメモする。

日本経済の現状は、2008年秋のリーマン・ショック直後のように、大幅な需要不足を抱えた状態ではなくなってきている。経済の実力を示す潜在GDPと実質GDPとのギャップは解消したとまではいえないにしても、かなり縮小してきているといえる。

もしこうした推察が妥当であるとすると、現在の日本経済の決して芳しくない状態は、実力からの下振れではなく、実力そのものの低下によるところが主因だということになる。すなわち、潜在GDPの伸び率(潜在成長率)が低下していることが、問題の本質だと考えられる。

潜在成長率は、労働人口の増加率に労働生産性の上昇率を加えたものである。その低下の原因の一つは、労働人口の減少にある。
しかし同時に、労働生産性の上昇を思うように実現できていないことにも原因がある。経済全体でみた労働生産性の上昇要因としては、①経済学者が全要素生産性の上昇と呼ぶイノベーション(技術革新)の成果②資本装備率(労働者1人あたりで使える資本設備)の引き上げ③労働生産性の上昇率の低い産業から高い産業への労働力移動――の3つが考えられる。

従って、労働力の可動性を高めるための労働市場改革などが、労働生産性を上昇させ、潜在成長力を引き上げることにつながる政策対応だといえる。けれども、こうした成長政策的な取り組みは、短期間で目覚ましい成果が上がるというものではなく、地道な努力が必要とされる。

・・・ということで、即効性への期待から金融政策への要求が強まることになるのだが、金融政策に負荷をかけることには副作用もある、というのが記事の後半部分の趣旨になる。

それにしても、だ。生産性の向上というのは、もう30年も前から日本経済の課題になっている。ような気がするけど、じゃあ今は目覚ましく改善してるのかというと、どうもそんな感じもしない。もともと日本は製造業の生産性が高く、サービス業は低いと言われていた。しかし、昨今の大手電機メーカーの「沈没」を目にすると、これからの日本経済全体の生産性を押し上げるのは容易ではない、という感じがする。

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