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2012年1月10日 (火)

アリストテレスと「資本主義」

新年早々、日経新聞にアリストテレスの名前をがあるのを見て「むむっ」という感じがした。「やさしい経済学」、執筆者は岩井克人先生、テーマは「貨幣論の系譜」。古代ギリシャのポリスにおいて、アリストテレスは「資本主義」を「発見」していたという・・・ことでメモする。

共同体がポリスにまで発展すると、「必要に迫られて、貨幣が案出された」とアリストテレスは述べる。 

貨幣が案出された当初は、それは交換の手段としてのみ使われていただろう。余ったモノと交換に貨幣を手にし、貨幣と交換に必要なモノを手に入れる。
だが、貨幣交換が拡大すると、手段と目的とが入れ替わってしまう。本来は交換の手段でしかない貨幣それ自体を、人々は欲し始めるのである。
貨幣でモノを買うのは、モノを売って貨幣を手に入れるためとなる。それが「商人術」である。(日経新聞1/6付・やさしい経済学「貨幣論の系譜3」)
 

なぜ人は貨幣それ自体を欲するのか? それは、貨幣がすべてのモノを手に入れる「可能性」を与えてくれるからだ。可能性それ自体としての貨幣に対する欲望には限りはない。貨幣の存在によって、人間は「無限への欲望」を手にしてしまったのである。 

事実、貨幣が交換の出発点であり目的点でもある商人術においては、目的点はさらなる拡大の出発点となり、貨幣によって一層の貨幣を求める「貨幣の無限の増殖」が始まってしまうと、アリストテレスは論ずる。すなわち商人術とは、現代では「資本主義」と呼ばれる経済活動にほかならない。 

ひとたび商人術が生まれると、人々は「善く生きることではなく、ただ生きることに熱中する」ようになり、共同体としてのポリスの自足性を内部から解体し始めるのである。 

共同体の高度化に不可欠な媒介としてポリスに導入された貨幣が、ポリスの共同体的な基盤を掘り崩す商人術を生み出してしまう。この逆説から、アリストテレスは目をそらさなかった。(日経新聞1/9付・やさしい経済学「貨幣論の系譜4」)

・・・自分的には最近、「アリストテレス」には敏感。何しろ、古代ギリシャからイスラームに伝わり、そこから中世ヨーロッパに逆流入。12世紀ルネサンスの学問的中心となりスコラ哲学の構築にも寄与した、これぞまさしく知の巨人。そのアリストテレスが貨幣の本性についても洞察していたってわけだから、さすが「万学の祖」って感じだ。

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