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2012年1月28日 (土)

「成熟債権国」移行には準備不足

昨年、31年ぶりに貿易赤字となった日本。図らずも現実化した「成熟した債権国」の段階に、このまま移行するには準備不足の感が否めない――1月27日付日経新聞1面と5面の記事(黒字が消える)からメモ。

貿易で外貨を稼げなくなっても、過去に蓄えた対外純資産から得られる利子や配当で黒字を稼ぐ――。米経済学者キンドルバーガーらが唱えた国際収支の発展段階説によると、貿易赤字だが所得収支の黒字で経常黒字を維持する状態は「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」への移行を意味する。 

発展段階説は英国の例が有名だ。産業革命をテコに世界でいち早く経済成長の軌道に乗り、19世紀後半には貿易・サービス収支と所得収支がともに黒字となる「未成熟な債権国」になっていた。
貿易収支は赤字だったが、
モノを運ぶ海運に伴うサービス収支の黒字で補った。植民地などへの積極投資をテコに投資収益も多く、所得収支の黒字も増やした。当時の経常黒字は経済規模の4%近くに及んだ。 

「成熟した債権国」に移ったのは1890年ごろ。モノの輸入が一段と膨らんで貿易・サービス収支が赤字に転じた一方、所得収支の黒字は膨らみ、経常黒字を保った。だが世界恐慌などを背景に暗転。1920年代に貿易・サービス収支が一段と悪化し、経常赤字に転落。「債権取り崩し国」の段階に入る。さらに第2次世界大戦では多額の債務を負った。 

戦後の英国は投資収益をテコに経常黒字を稼いだ時代もあったが、1980年代半ばからは経常赤字が続く。ただ所得収支は今も黒字を確保する。金融センターとして世界中から資金をひきつけ、余ったお金を海外投資に振り向けて稼ぐ形だ。主要国のなかでは、経済規模に比べて対外直接投資の残高が多い。 

過去に成熟した債権国として長続きした国はあまりない。米国も経常赤字国。基軸通貨国のメリットを生かして海外から大量に資金を集め、一部を対外投資に回して所得収支の黒字を保っている。 

10年末の対外直接投資残高を名目国内総生産(GDP)比でみると、日本は15%どまり。英国は75%、ドイツは43%、米国も33%と主要国の中で日本の出遅れは鮮明だ。

・・・日経紙面には、主要国の対外直接投資残高の名目GDP比の棒グラフがあり、各国の1990年と2010年が対比されているのだが、日本は水準、伸び率ともに低い。英米が世界中から投資資金を調達できるのは「基軸通貨国」のブランドがモノを言っているのだろうし、独仏の投資残高の伸びが高いのは、やはり単一通貨ユーロによる経済圏創出が追い風になっていると思われる。

ま~先行者である英国の場合は歴史的経緯もあって、後に続く国がそのまま再現できるモデルとは思えないけど、とにかく日本も、円の国際化や円経済圏の拡大を戦略的に進めながら「投資で稼ぐ力」を養わないと、あっという間に「債権取り崩し国」になってしまう恐れありだよ。

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