「90年代」の「亡霊」
オリンパスの損失隠しで、新聞には「財テク失敗」「バブル崩壊」「飛ばし」などの言葉が並び(財テクは殆ど死語だな)、いわば「90年代」の「亡霊」がさまよい出たような感じ。日経新聞11/8付電子版記事(財テク企業オリンパスの罪と罰)からメモする。
1980年代後半のバブル期は、余裕資金を証券市場で運用し、ひと稼ぎをする財務部門が企業内部でも脚光を浴びていた。余裕資金と言っても今日のように有効な設備投資先が見当たらないから、企業内部に滞留してしまった資金ではない。旺盛な設備投資意欲に応えるために株式や新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、市場から調達した資金のうち、直ちに設備投資に回さない部分を、財務部門が有効活用していたのだ。
これを「財テク」と呼んでいて、その受け皿となったのが特定金銭信託(特金)や指定金外信託(ファントラ=ファンドトラストの略)だった。いずれも、企業が以前から保有していた株式と同一銘柄の株式を売買しても簿価を通算しなくていいという利点があったため、便利に活用されていた。しかも、投資顧問会社などのプロの運用担当者に運用を委ねるのではなく、証券会社の法人担当部員に運用を任せるのが一般的だった。
株式バブルが崩壊する前までは、目標利回りをクリアすることも多かった。ところが、90年から始まったバブル崩壊とともに、困った証券会社は顧客の重要度に応じて(1)可能な手段で損失を補てんする(2)決算で損失が表面化しないように「付け替え」や「先送り」のお手伝いをする(3)顧客に損失を押しつける――などの対応をとった。
・・・で、顧客に損失を押し付けることができなくて潰れちゃったのが山一証券。自分で抱え込んだ損失を「飛ばし」ても隠しきれなくなり、1997年に破綻に追い込まれた。
オリンパスは本業が確りしてるから潰れるとまでは思わないが、上場廃止は免れないだろう。
欧米経済の「日本化」、すなわち欧米先進国がバブル崩壊後90年代以降の日本と同じ経済低迷の道を辿ることが懸念されている中、その日本では90年代の亡霊が出てきたと考えるのは、やや自虐趣味に聞こえるかも知れない。しかし、日本の「90年代」は完全に過去になっている、と断言することも難しくなった印象がある。
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