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2011年10月24日 (月)

イスラムの知が生んだ西欧近代

今週の「週刊東洋経済」(10/29号)の書評欄に、『イスラームから見た「世界史」』(タミム・アンサーリー著、紀伊国屋書店)という本が取り上げられている(評者は山内昌之・東京大学大学院教授)ので、メモする。

11世紀から12世紀に活躍した「世界史に残る知の巨人」ガザーリーの業績を立体的に描く筆致は、読者を一気にイスラーム文化史に引き込むだろう。ガザーリーの『哲学者の意図』は、ヨーロッパに伝わって西欧人にほぼ最初のアリストテレスとの出会いを可能にさせた。ガザーリーのあまりにすばらしい哲学解釈に、著者がアリストテレスその人だという誤解さえ与えたほどだ。 

数学や自然科学の結論が神の啓示と矛盾する場合にはどうなるのか。ガザーリーは結論のほうが間違っていると断定した。しかし著者も言うように、科学は啓示と同じ結論に達した場合にのみ正しいのなら、科学の必要性はどこにあるのか。実際に、イブン・ルシュド(アヴェロエス)は反駁を加えたが、論争に勝利を収めたのはガザーリーだった。これ以来、ギリシア思想に基づくイスラーム哲学は衰退し、ムスリムは自然科学に対する関心を失った。

著者は明言していないが、イスラームに学びながら、それにかわって自然科学を発達させたのはヨーロッパなのだ。この差こそ近代化の成功をめぐる明暗につながる。

・・・古代ギリシャの哲学と自然科学が、時を隔ててイスラム経由で中世西欧に伝えられた後、西欧においては哲学と科学は大いに発展したのに対して、イスラムでは衰退または停滞した。歴史におけるこの逆説というか、同じ一神教の宗教地域における社会の発展の不可思議なねじれがなぜ起こったのか。それには近代化というか、世俗化という観点から見ないと分からないかな、と何となく思う。

この本を翻訳した小沢千重子さんは、『中世の覚醒――アリストテレス再発見から知の革命へ』という本(これも紀伊国屋書店)も訳している。やっぱりね、翻訳者って有り難い存在だと、つくづく感じるよ。

それにしても、あらためて古代ギリシャの学問って凄かったんだなあと思う。イスラム世界にもキリスト教世界にも多大な影響を及ぼしたわけだから。でも今のギリシャはヨーロッパのお荷物、世界経済混乱の元凶扱い。トホホな感じ。

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