株価の示す社会の「下流化」
消費関連企業の株価を見る限り、誰かが言ってた社会の「下流化」はどうやら現実のものになりつつあるらしい。本日付けの日経新聞電子版記事(株価が示す「中流意識層」の大没落)からメモする。なお、文中の高級品企業10社はHOYA、オリエンタルランド、TOTO、オンワード、セコム、ヤマハ、高島屋、三越伊勢丹、資生堂、帝国ホテル。生活防衛企業10社はABCマート、しまむら、ヤマダ電機、ファーストリテイリング、スカイマーク、ニトリ、王将フード、ゼンショー、良品計画、サイゼリヤ。
株価を見ても、中堅層のちょっとしたぜいたくに応えるような商品やサービスを提供している高級品企業は低迷が続く。百貨店やホテル、高級ブランド商品のメーカーなど10社を抽出し、合計時価総額の推移をみると、米国の住宅バブルが崩壊する前の06年1月には6兆9300億円のピークを記録したが、直近では2兆7800億円と59.9%も減少した。リーマン・ショック後の落ち込みからの回復も鈍い。
米市場ではティファニー、コーチ、ササビーズ、ロイヤル・カリビアン・クルーズなどの株価が大きく上昇し、高級品消費の健在ぶりを示している。しかし、日本では低所得層が目の敵にするような超富裕層が少ないこともあり、高級品企業といっても基本は中堅層相手。その層の家計が余裕を失い、今後もさらに負担増を余儀なくされそうなことが、株式市場での警戒感につながっているように見える。
生活防衛企業10社の時価総額はじわじわと高級品企業10社の時価総額と差を縮めている。10年前には前者が後者の30%前後だったが、直近では60%弱にまで高まった。業績をみても高級品10社の売り上げは頭打ちなのに対し、生活防衛10社は伸びている。利益面では10年3月期には生活防衛10社の合計経常利益が高級品10社の合計経常利益を初めて上回り、12年3月期にはさらにその差を広げる可能性がある。もともとの低所得層に加えて家計の余裕を失った中堅層が参入し、生活防衛企業はこれからますます栄えるのかもしれない。
・・・かつて、もう30年も前のこと、この国では「一億総中流化」が語られたりもしたのだが、それも結局は一時の幻だったとしか言いようがない。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)