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2011年8月30日 (火)

キリスト教の「終末遅延問題」

聖書を語る』(文藝春秋)は、佐藤優と中村うさぎの対談本。クリスチャン同士の対談から、非キリスト教徒にとって面白いと思われるところをメモする。まずは「終末遅延問題」。

中村:何度聞いても「はぁ?」って思っちゃうのは、「終末遅延問題」ってヤツね。新約聖書が書かれたのは、この「終末遅延問題」が動機なんでしょ?
佐藤:そう。イエスは、「私はすぐに来る」と言って消えた。でも、三年待っても五年待っても来ない。四十年待ったところで、ようやく心配になってきた(笑)。そこで、初めて福音書を書き著わそうという気になったわけですよ。
中村:イエスが死んだのはいつごろだっけ?
佐藤:紀元30年ごろですね。現在すでに千九百八十年ほど遅延しています。
中村:二千年近く経ってんじゃん!いくら何でも遅れすぎ!二千年も来なかったらさ、普通、もう来ないだろうって思うよね。信者たちは、そう思わないの?
佐藤:ですから、これは遅延であって、終末がないということではない。神学上の非常に深刻な問題で、業界では「終末遅延問題」と呼んでいます。
中村:この話を聞くたびに私は、なんでキリスト教徒はそんなの信じてるんだよって思うのよ(笑)。

・・・どっちにしても、キリスト教的には、イエスの誕生と世界の終末は決定的に重大な動かしがたい出来事、ということらしい。もう一つ、文献学的な「誤訳問題」についてメモ。

佐藤:旧約聖書はヘブライ語で、新約聖書はギリシア語です。新約聖書が書かれた時代に流通していた旧約聖書はギリシア語訳のものです。そしてヘブライ語からギリシア語に訳されたときに、けっこうたくさんの誤訳が生じた。典型的なのが処女降誕の「処女」。ヘブライ語では単に「年頃の女」だったのに、ギリシアには処女神であるアルテミス信仰があるものだから「処女」と訳しちゃった。
中村:「処女マリア」は誤訳だったんだ!
佐藤:そう。それが教義として定着してしまったわけです。
処女ということが誤訳から出てきた解釈であることは、文献学的にほぼ確定しているにもかかわらず、教会の平和のためには敢えて議論しないことになっているわけ。都合の悪いことについては黙る、というのが優れた神学者に求められる資質です。
中村:政治家みたいだね。

・・・何と言ってもキリスト教は信者数22億人、今のところ世界最大の宗教なんだけど、非キリスト教徒としては、こういう話を知ることで、やっぱりキリスト教って何かヘン、とか思って、少し安心するわけです。(苦笑)

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