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2011年8月29日 (月)

「シャインズ」と「コモンストック」

1990年前後、大企業に所属するサラリーマンが歌手デビューし、大企業を辞めたサラリーマンがロックバーを作るという出来事があった。前者が「シャインズ」、後者が「コモンストック」である。いずれも自分と同年代の人たち(シャインズは4歳下、コモンストックは1歳上)が実行した、スタイルとしては両極端の試みは、自分の中に強い印象を残した。

先日、杉村太郎氏の訃報に接して、シャインズのことはもちろん、コモンストックのことも思い出したのは、上記の理由による。もちろん両者に直接のつながりはない。でも、ひとつ記憶していたことがある。コモンストックを開業した二人が当時出版した本(『ころがる石ころになりたくて』)の中に、会社を辞めてロックバーを作る決心をした息子に宛てた、母親の苦悩に満ちた手紙の内容が記されているのだが、そこにシャインズが引き合いに出されている個所がある。母親はテレビ番組で彼らを見たらしい。引用してみる。

今ナイトラインという番組を見ていました、シャインズというへたくそな歌手のコンビが出演していました・・・・・・リスクが大きいからサラリーマンをやめるつもりはないとのこと、お前より若くても根性がありますね、ちかごろは理解を示す会社もあるよし、色々考えさせられました・・・・・・何度でも言います再考を。

母親というものは我が子の安泰だけを願っている、有り難い存在なわけで、会社と好きなことの両立を図るならともかく、会社を辞めて好きなことをするなんて言語道断、というのが母親の思いであったのは容易に想像がつく。それはそれとして、自分の中では、これがシャインズとコモンストックの接点?と言えなくもないかな。

結果的には、シャインズは3年、コモンストックは7年という存続期間だったけど、期間の長短が問題なのではなく、彼らの企てが自分も含めて多くの人の記憶に残った、というのが肝心なところだ。

自分にしかできないことをやる。会社の中に留まりながら、そのことにトライしたのがシャインズ。会社の中でそんなことできる訳ないんだから、会社の外に飛び出してやりたいことをやる、のがコモンストック。同年代である彼らの自らの可能性に賭けた挑戦を、自分は共感と羨望を持って眺めることしかできなかった。

男だったら誰でも若い頃、自分にしかできないことは何か、というヤクザな思いに捉われたことがあるだろう。しかし結局のところ、才能と覚悟、せめてどっちか一つ、が無いならば、それはただの夢として諦めた方が良いな。自分には二つとも無かったし、今ある自分を認めるほかないよ。(苦笑)

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