村上龍は意外と健全
村上龍のエッセイ集『逃げる中高年、欲望のない若者たち』(KKベストセラーズ)を読んだ。サッカーと音楽を語るときは例外的に熱を帯びるけど、全般的に淡々と素っ気無い調子で世の中に対する苛立ちを吐露している。
理由が示されていないので、なぜかは分からないけれど、村上龍は「自殺は非常によくないことだと思っている」とのこと。文学は自殺に始まり自殺に終わる(極論)、くらいに思ってる自分から見ると、とっても健全だし意外感があった。
かつて村上龍は、合コンや美容整形やブランド信仰や援助交際などの社会風潮に対して批判的だった。しかし今では、それらの行いに感心できないのは変わらないにしても、うつ病になったり、自殺するよりはましだと考えるようになったという。つまり、それだけ今の世の中は酷い状態だと、村上龍は認識している。以下引用。
「経済の衰退が長く続き、給与は低く抑えられたままで、未来は今よりもよくならないという予感が世の中全体を覆うような時代には、心身の病気にかからないとか、自殺を考えるような精神状態を作らないことが優先される」。
ところで村上龍は、「いくつになっても母親の言うことは聞くようにしている」という。なぜなら、「全部ではないが、真実が潜んでいるからだ」。これもまた健全というか微笑ましいというか・・・既に母がこの世にいない自分は、ちと羨ましさを感じたりする。
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