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2010年4月21日 (水)

「市井に生きよ」(半村良)

書店で『乗り移り人生相談』という本が出ているのを見て、「へぇ~」って感じた。著者は島地勝彦。元「週刊プレイボーイ」編集長。同誌の「名物」、若者向け人生相談に回答者として名を連ねた今東光、柴田練三郎、開高健。既に他界した御三方が島地氏に「乗り移り」、悩める男女に指針を告げる。もともとは日経アソシエ・オンラインの連載。

プレイボーイの人生相談と聞けば、35年前の高校生であるワタシは懐かしい、というほかない。最初が今東光、次が柴田練三郎で、二人とも亡くなって連載が終了。三番目は岡本太郎だった、というのが自分の記憶。毎週ではないけれど読んでいたはずなのに、上記の方々の人生相談を面白いと感じた覚えは正直あまりない。

プレイボーイの人生相談で印象に残っているのは半村良。タイトルは「人生ごめんなさい」。これを機会に調べてみると、1983年1月から5月の掲載、翌年に単行本化。割と短期間の連載だったんだな。

自分の本箱の引き出しには、変色した週刊誌のザラ紙が残っている。「人生ごめんなさい」連載時に切り取った数ページである。例えば今ではほぼ死語と思われる「ネクラ」について。18歳学生が「ネクラのよさを先生に教えていただきたい」と尋ねると、半村先生は「ネクラって本当に素晴らしいですね! 私から言わせるとネクラじゃない青春を送っている人は、気違いみたいな人だと思います。青春というのは、ある意味で競争の一番激しい時でもあるわけです。学力だってそうだし、知識もそうだし、就職もそうです。女の取りっこだってそうでしょう。一番苛烈な戦闘をしている時に、ネクラじゃないなんていうことが、ありうるでしょうか。私にはとても考えられません。青春は“ネクラ”なのです」と回答。これを読んで、憂鬱な若者だった自分も安心した覚えがある。

以下の質問と回答にも感銘を受けた。

人生を考え、生活を考え、職業を考え、人生を有意義に豊かに生きたいと思う。小より大に、女々しいより男らしく、政治は好きじゃない。理想をいえば、生活に心配のない世の中を望み、そして、木々の緑の中で笑顔に囲まれ、読書の日々、風雅という言葉が好きだ。
しかし、何かで読んだ「世界に飢えた人のいる限り、おれは風雅の道は絶対にいかぬ」という言葉の前で、おれの人間性、人生観は狭く粗末なものだと感ずる。
豊かで男らしい人生、人間性とは一体なんでしょうか。(塾経営者 30歳)

きみの生き方は、それだけでりっぱだと思います。いまさら、なにひとつ変えたり、悩んだりする必要はありません。市井の暮らしに徹すれば、風雅またおのずから生ずるものであります。市井は広し。市井に生きることです。
塾経営者30歳氏よ! きみに接する子供たちは幸せです。

・・・市井に生きれば、それで充分。実に味わい深い答えだった。今の自分がきちんと市井に生きているかというと、何だか心もとないが。

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