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2009年9月12日 (土)

海軍軍令部の罪

8月のNHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」(全3回)が今週再放送されたので、録画して見た。80年代に行われた「海軍反省会」における海軍関係者の議論の内容を中心に取材して、海軍軍令部の開戦から戦後にかけての組織的な動きをまとめたものである。

海軍の中で作戦立案を行うのが軍令部。艦隊はその作戦を実行する。海軍省は政府内で予算・人事を担当。

軍令部は天皇の統帥権をサポートする位置付けだが、皇族をトップに据えたり、「統帥権の独立」(出たよ)を盾にして自らの権限を拡大し、兵力量の決定権を手に入れて軍縮からの脱退を実現する。

海軍省は開戦に慎重だったが、軍令部は早期開戦を主張した。それは海軍が戦争に反対したら、陸軍や右翼に内乱を起こされて海軍が支配されるという恐れからであり、どうしても戦争をやらなければならないのなら、海軍という組織を守るためにも、少しでも勝ち目のある時にやるという思惑からだった。

昭和15年に、国家総力戦準備のための中枢組織として設立された第一委員会は、開戦半年前に報告書を作成し、その中で米英が石油供給を止めた時が武力行使の時であるとした。その主張の狙いは、米英との対立を煽ることによる軍事予算獲得にあった。しかし皮肉にも、報告書の分析通り米英の石油輸出禁止を契機に日本は戦争に突入した。

戦局の悪化に伴い、軍令部は特攻兵器の開発を進めた。回天(潜水艦)、桜花(飛行機)、震洋(ボート)等々。特攻は軍令部が組織的に進めた「作戦」だった。ちょっと驚いたのは、昭和20年1月の時点で「1億総特攻」の方針(最高戦争指導会議)が謳われていたこと。戦争指導者たちは敗北の責任を認めるのではなく、逆に国民全てを犠牲にしようとしていたのだ。

戦後も軍令部の関係者は、東京裁判において海軍上級者の極刑を避けるために動いていた。結局海軍も、陸軍ほどあからさまではなかったにしても、国家を守るのではなく自らの組織の利益のために行動していたことになる(海軍反省会の出席者は、「陸軍は暴力犯、海軍は知能犯」と表現していた)。

世の中にエリートは必要だ。彼らがいなければ世の中は回らない。しかしエリートたちが国家的使命を忘れ、社会的責任感を失った時に悲劇は起こる。それは戦時であろうと平時であろうと変わりはない。

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