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2009年6月22日 (月)

バラバラ殺人と「責任能力」

2006年末に東京・渋谷区で起きた2つの「バラバラ」殺人事件の裁判では、いずれも被告人の「責任能力」が争点になった。『あなたが猟奇殺人犯を裁く日~裁判員なりきり傍聴記~』(扶桑社新書)からメモしてみる。まずは兄が妹を殺害した事件。

(被告人に対する精神鑑定結果では)殺害行為の精神状態と遺体解体時の精神状態は違うとし、解体のときまでは解離性障害、解体時は強迫性障害であると述べていました。素人には何がなんだかさっぱりです。結局、鑑定医の結論としては、遺体損壊時は責任のない状態(心神喪失)、殺害時はある程度の判断能力を有しており責任能力は限定的だけどあった(心神耗弱)とのことでした。

後日行われた論告求刑。ここで検察側は鑑定人が出した結果を完全否定し、被告人には犯行当時、全ての場面において完全責任能力があるとしたうえで懲役17年を求刑。対する弁護側は鑑定結果に乗っかって、責任能力はないとし、強気に無罪を主張して結審しました。

判決は懲役7年でした。裁判所は、殺害時の被告人は完全責任能力があったものの、遺体を損壊しているときには責任能力がなかったと結論付けました。
検察側も弁護側も控訴。09年4月28日現在、東京高裁にて言い渡された判決は一審破棄、懲役12年。死体損壊時も責任能力があると認定されました。

次に妻が夫を殺害した事件。

弁護側の鑑定人は「犯行時、死体遺棄時には短期精神病障害に罹患しており、責任能力が欠如していた、心神喪失状態と推認できる」と結論付け、同様に検察側の鑑定人も「責任能力を喪失していたことは十分想定できる」と結論付けました。弁護側の鑑定人がこのような結論を出すことは想定できますが、まさか検察側の鑑定人まで。驚きです。

そして論告求刑。やはり鑑定人がこのような結果を出しても、検察は「被告人には完全責任能力があった」として、懲役20年を求刑。対する弁論。改めて被告人に責任能力がないと主張し、結審しました。

判決は懲役15年でした。(裁判所は被告人に完全責任能力を認めた)
被告は控訴。09年4月現在、東京高裁は三度目の精神鑑定を行う方針です。

・・・事件が「猟奇的」な様相を呈しているからといって、犯行者が「異常な」精神状態の中で判断能力を失っていた、とはいえないだろうなあ。殺害後の遺体の分断・分解は、死体を運ぶとか捨てるとかしやすくするためにポータブルにするってことで相当「合理的な」行動であり、当人としては「証拠隠滅」という「目的」のために、なりふり構わず「意思的」に進めているはずだから、当然責任能力は認められるだろうなと思う。この本にはより最近のバラバラ殺人、08年4月東京・江東区で起きたOL殺害事件の裁判も取り上げられているけど、こちらは別に「精神鑑定」はしてないみたいなので、06年末の2つの事件で「責任能力」が問われたのは、「猟奇的」であるってことよりも、「家庭内殺人」というのか、兄と妹、夫と妻という当事者の関係性から見て「異常」ってことなのかも知れない。でも夫婦も元は他人だし、きょうだいは「他人の始まり」だったりするが(苦笑)。まあ何にせよ「責任能力」を問うというのは、裁判をややこしくするだけのような気がしてしまうのだ。

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