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2009年4月16日 (木)

食糧危機のウソ

最近も穀物価格高騰を背景に、「食糧危機」の到来がまことしやかに語られていたのは記憶に新しい。しかしながら危機を語る人々は結局のところ「狼少年」のようだ。『「食糧危機」をあおってはいけない』(川島博之・著、文春ペーパーバックス)からメモ。

開発途上国の経済の発展、中でも莫大な人口を抱える中国、インドを中心とするBRICs諸国の成長によって、世界的に食糧生産が足りなくなるという見方があります。経済成長によって人々の所得が向上し生活水準が上がると、動物性タンパク質、肉の需要が増える。食肉の生産には飼料としてたくさんの穀物を必要とするので、当然のように中国の食肉生産が穀物需要の拡大につながると考えられたわけです。しかしそこに食糧危機説の見当違いがありました。中国で実際に増える家畜の飼料の中心となったのは、小麦でもトウモロコシでもありませんでした。大豆なのです。それも油を絞った後の大豆の絞りかす、いわゆる「大豆ミール」でした。

中国の大豆の需要増加をまかなったのがブラジルでした。そして、食糧危機説の第二の間違いは、このブラジルでの大豆生産の増加を予測できなかったことでした。

食糧危機説の第三の間違いは、経済発展によって中国の人々が欧米人と同じ食生活に近づくと考えたことです。しかしアジアには欧米ほど強く肉食に偏重する嗜好はありません。文化には多様性があって、食文化はもっとも保守的な価値観に根ざすところです。食糧需給を予測するのにはそうした観点も重要です。(第一章「爆食中国」の幻想)

このほか、世界人口は増加率鈍化から今後は減少も視野に入ることや、農産物生産はまだまだ伸ばす余地があることなどが論証されて、「食糧危機」が現実になる可能性は小さいことが説得的に示されている。

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