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2009年4月18日 (土)

恐慌と労働力商品化

「中央公論」5月号掲載の西部邁と柄谷行人の対談「恐慌・国家・資本主義」からメモ。

柄谷:一般にマルクス主義者は、恐慌は資本主義の崩壊、社会主義の到来をもたらすと考えましたが、宇野弘蔵は違った。彼は、『資本論』に書かれているのは、恐慌の必然性である、しかし、それは革命の必然性ではない、というのです。

西部:ぼくが宇野弘蔵を読んで非常に強く印象に残っているのは、「労働力商品化の無理」という論点です。労働力というのは資本主義的機構では再生産ができない。次世代の労働力は家族で男女が生み出すわけですから、それは資本主義のシステムの外部にある。
労働力供給も恐慌論と密接な関係があって、好景気が始まっても、労働力は景気に合わせて増えてくれないから、労賃がどんどん上がる。資本家が好景気に乗って投資を進めていく。そうすると、それに伴って労賃が上がり、労賃上昇ゆえに、ある段階から利益から損失に転換する。その途端に、資本主義的な再生産が障碍を起こす。これが宇野のいう恐慌の必然性の要点で、そういう意味で、労働力商品化の無理が資本主義のアキレス腱だといった。

柄谷:ポランニーは、近代資本主義経済は、本来商品にならない三つのものをフィクションとして商品化したところに成立したといいました。第一に、宇野弘蔵が強調した労働力の商品化です。第二に、土地の商品化、第三に、貨幣の商品化です。現在の信用危機は、第三の虚構から生まれたものです。

同じ雑誌の佐藤優の連載でも宇野弘蔵が取り上げられていて(「新・帝国主義の時代」)、そこでは「宇野は、恐慌の原因を生産過剰や過少消費に求めない。資本主義はあらゆるモノやサービスを商品にする傾向がある。しかし、資本主義を成り立たせる根本である労働力商品だけは、任意に作り出すことができない。好況期に労働賃金が上昇し、資本にとってこれでは生産をしても利潤が得られないという状況が生じ、これにより恐慌が生じると考える。資本が過剰になっているのだ」、と解説されている。

過去の知的遺産から学ぶことの重要性は認めるとしても、今回の金融危機から発した「恐慌」を考えるためには、バブル、証券化商品、レバレッジ、投資理論、投資家心理等へのテクニカルな考察も相当必要であり、人文社会科学系の原理論だけでは現実を捉えるのに不十分だと思える。

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