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2009年4月19日 (日)

人間学と経済学

昨年のビジネス書ランキングでも評価の高かった『アダム・スミス』(中公新書)。その著者、堂目卓生・大阪大学大学院教授の論文(いま甦るアダム・スミスの思想、中央公論5月号)からメモ。本を読まずに雑誌論文で分かったつもりになろうという魂胆。(苦笑)

スミスは、市場経済が本格的に拡大する18世紀中頃のイギリスにおいて、いかにして人間の心に反しない市場が構築されうるかという問題に取り組み、「人間学」(人間本性に関する考察)にもとづく経済学の確立を構想したのであった。

(スミスの構想では)経済学は、「理論」の領域と「政策」の領域に分けられる。政策の領域においては、諸事実に対して、また諸理論にもとづいて、何らかの「目標」が設定される。それら(目標)は「立法者の規範原理」(政策当局が採用する善悪の判断基準)があってはじめて設定されうるのである。

人間学の目的は、他人の行為や自分の心の観察を通じて、「規範」の領域、すなわち個人の規範原理および立法者の規範原理を解明することである。したがって、経済学は、政策の領域をカバーしようとするかぎり、人間学的考察から独立であることはできない。

スミスの『道徳感情論』(1759)と『国富論』(1776)は、それぞれ人間学と経済学を扱う書物である。『道徳感情論』は、市場経済を人間の心に反しない制度として存続させるための条件を示す書物であり、『国富論』の人間学的基礎をなす。

スミスの人間学の中核となる概念は「同感」である。
私たちは、自分の感情や行為と、他人の感情や行為を比較し、それらが一致する場合には是認し、著しく異なる場合には否認する。

私たちは、一方で世間の是認や否認にさらされ、他方で胸中の公平な観察者の是認や否認にさらされる。スミスは、「賢人」は胸中の公平な観察者の評価を重視するが、「弱い人」は世間の評価を気にすると考える。スミスは、弱さと賢明さの両方をもつ諸個人を束ね、社会の秩序と繁栄を司る立法者がもつべき原理は、「賢人の原理」であると考えた。

・・・経済学は人間学に基づかなければならない、というのは真っ当な主張かも知れないが、いまや人間学なるものも相当壊れつつあるような気もするので、そう簡単に「アダム・スミス」が甦るのかどうかは分からない。

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