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2009年3月16日 (月)

世界不況と日本の宿題

日本経済は、構造改革も株主資本主義もまだ足りない。「集中講義・金融危機と経済学」との副題が付いた『なぜ世界は不況に陥ったのか』(池尾和人、池田信夫の共著、日経BP社)から、まず「第6講 危機後の金融と経済の行く末」の池尾発言をメモ。

輸出型の製造業だけが生産性が高く、国内市場でのみ活動している産業については生産性の水準は高くないし、伸び率も低い。そうした構造は、80年代以降、何ら変わらない。われわれは何も問題を解決してこなかった、何の構造改革も実はやってこなかったということだと思います。

日本経済は深刻な体質改善を必要とするような疾患を抱えている。要するに投資機会不足病とでも言うべきものです。国内の貯蓄を国内での投資に使い切るだけの投資機会が不足しているために、貯蓄超過になって経常収支が黒字になっています。

それゆえ、今回の需要不足を解決するためにも、財政出動や金融緩和による需要喚起ではなくて、投資機会をいかにして増やすかを考えることの方が重要だと思っています。これは投資機会の拡大につながるような構造改革を進めるべきだというタイプの話になります。経済を実力通りの姿にもっていく(振れの縮小)のが、金融政策とかの役割です。しかし、経済の実力そのもの(水準)を向上させるのは、構造改革の課題です。

次に「エピローグ」(池田)からメモ。

現在の需要ショックには一時的な要因もあるでしょうが、基本的には円安バブルが突然終わったことによって日本企業の実力相応の水準に戻っただけでしょう。
こうした状況では、短期的な財政・金融政策に大した効果はありません。民間の経済主体が、自分のリスクでチャレンジするしかないでしょう。このようなチャレンジを可能にするためには、やはり資本市場の機能が重要です。

資本市場は撤退(イグジット)のメカニズムだと考えることができます。アメリカ経済を苦境から救ったのは、ジャンクボンドを使ったLBOによって企業を買収し、資本効率を高めて利益を上げる投資銀行や投資ファンドでした。LBOによってレバレッジを高めることは、資本効率を上げないと金利も払えなくなって倒産するという緊張感を作り出し、経営者を規律づけるメカニズムとして機能したのです。

客観的にみて、日本にはまだ株主資本主義が足りないと思います。産業間で物的・人的資本を移転するには、株主資本主義の原理で企業を売買する「企業コントロールの市場」が必要なのです。今回アメリカの投資銀行の教訓で、情報の非対称性などの欠陥を放置したまま市場が野放図に拡大すると深刻な問題が起こることが分かったので、そうしたルールを整備した上で資本市場を充実する必要があります。

・・・昨今「構造改革」批判の論調も見受けるが、改革修正を唱えるのはともかく、改革を否定するのは現実的とは思えない。「長期衰退をどう防ぐかという問題設定」(池田)を念頭に、構造改革で国内の投資機会を拡大し、株主資本主義で産業界の再編を進めるなど、やるべきことはやり続けなければならない、というほかない。

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