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2009年2月 7日 (土)

世界一冷たい格差社会

日本は「世界で一番冷たい」格差社会、という記事にネットで出会った(ダイヤモンド・オンライン2008年6月30日付)。日本は福祉機能で米国に劣り、雇用環境で欧州以下と、政治学者マルガリータ・エステベス・アベは指摘する。半年以上前の記事だが、「派遣切り」の嵐が吹き荒れる今読むと、ひしひしと実感される内容なのでメモ。

日本で格差問題が悪化したのはアメリカ型の市場原理を導入したからではないか、との批判が高まっているが、これにはいくつかの誤解がある。

アメリカは確かに国家の福祉機能が小さく、利潤追求と競争の市場原理を重視しているが、それがすべてというわけではない。市場原理にまったく従わない民間非営利セクターが大きな力をもち、福祉機能、すなわち社会を維持する役割を担っている。

日本はアメリカと似て国家の福祉機能が小さく、また、「自助努力が大切だ」と考える人が多い。しかし、企業や社会にはじき出された人を守るシステムが弱く、家族に頼らなければならない。問題は家庭内で解決できない時にどうするかである。

欧州先進国の多くは国家の福祉機能が大きく、「市場で失敗するのは個人だけの責任ではないので、国家が助けるのは当然だ」と考える人が多い。こうしてアメリカとヨーロッパ、日本を比べてみると、日本が一番冷たい社会のように思える。

正規・非正規社員の賃金格差の問題にしても、同じ仕事をしながら賃金に大きな差が出るということはアメリカではあり得ない(もしあれば明らかに組織的な差別)。日本企業ではインサイダー(内輪の人間、つまり正規社員)の雇用保護が強いので、アウトサイダーの非正規社員が不利益を被ることになる。本来は労働組合が何とかすべき問題だが、企業内組合なのでアウトサイダーのために本気で闘おうとはしない。

インサイダーの雇用保護はヨーロッパでも起こっており、日本特有の問題ではない。しかし、ヨーロッパでは労働組合(産業組合)が強いので、非正規社員に同じ仕事をさせて賃金を低くするという雇用形態は許さないだろう。

日本は非正規社員を守るシステムが事実上ほとんどないが、これは政治的に解決できる問題だ。政府がそれをしないのは、企業の反対が強いからだろう。

・・・家族の機能低下と共に、日本の福祉制度の貧弱が露になっているということ。かつて日本的経営の3種の神器は「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」といわれたが、これらはある部分は崩れ、ある部分は残されて、歪みが生じているということ。「新自由主義的改革が格差を拡大させて社会を破壊した」という大雑把な批判は殆ど実効性をもたない。日本の福祉制度と雇用環境の欠陥を地道に修正していくしかない。

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