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2009年2月11日 (水)

グローバル・インバランス

今週の「週刊東洋経済」(2/14号)の特集は「特別講義・世界経済危機」。今回の経済危機の根本原因は、国際的な経常収支の不均衡、つまりグローバル・インバランスの急拡大であり、そこから日本の課題も見えてくる。池尾和人と竹森俊平、二人の慶應義塾大学教授の論説からメモ。

そもそもアメリカの経常赤字は過剰消費によりGDP比で6%前後と過大になっているが、その裏側にはアメリカの経常赤字補填のファイナンスを行う資本輸出国がいる。ではこうした資本輸出国がどこかというと、アジアやラテンアメリカの新興国だ。97年を境に「貧しい国」から「豊かな国」に国際資本が流れるという不自然な変化が起きた。97年といえばアジア通貨危機である。この危機をきっかけに新興国は、資本輸入に依存した経済発展を嫌い、むしろ国内投資を抑制してまでも国内貯蓄の余剰を創出して、それを海外に輸出するようになった。こうした国際資本がアメリカに向かい、アメリカだけが突出して経常赤字を膨張させた。これが「グローバル・インバランス」のメカニズムだと考えられている。(竹森)

00年以降、急激にグローバル・インバランスが拡大していくプロセスで、米国には経常赤字を埋め合わせるための巨大な資金が流れ込んだ。この資本移動の動きをチャンスととらえてビジネスを拡大してきたのが米国の金融サービス業だ。したがって、グローバル・インバランスの急激な巻き戻しが始まると、米国では金融危機という形で問題が顕在化した。一方、日本は、米国の過剰消費に乗っかる形で輸出を伸ばしてきたから、輸出産業の失速という、米国とは別の形で問題が発生することになった。つまり、表面に現れた現象が違うだけで、問題の根っこは同じということだ。(池尾)

危機後の世界においては、アメリカが消費を減らした分だけ、ほかの国が需要を増やさなければならないことになる。そこでアジア経済の内需拡大型への転換が議論されている。歴史的に見ると内需拡大型に転換した唯一の成功例がアメリカだ。アメリカが成功した理由は、とりもなおさず金融市場を育成・拡大させたことにある。必要なのは、マーケットを育てて、その中で新しい投資対象を見つけ、試行錯誤で新しい産業を伸ばしていく戦略である。その際、いちばん有効なのが金融市場である。(竹森)

国際的なアンバランスの原因の一つとなった、日本の過剰貯蓄とは、いったいどのようなものか。実は、そのほとんどが法人貯蓄によって占められている。本来、企業が内部留保する資金というのは、成長のための投資に使うべきもので、きちんと企業が投資機会を見つけて振り向けていれば、このような過剰貯蓄は起こらなかったはずだ。これが意味することは、日本が自国内で新しい投資機会をまるで創り出せてこなかった、という事実である。(池尾)

池尾先生は、「日本は前川リポートなどで1980年代から内需拡大の必要性が唱えられてきたにもかかわらず、産業構造の転換をまるで進めてこなかった」とも指摘。グローバル・インバランスの認識で露になった日本の課題とは、かなり以前からやり残してきた宿題でもある。

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