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2008年10月 5日 (日)

バブルには効用もある、のか

資本主義は嫌いですか』(竹森俊平・著)の第Ⅰ部「ゴーン・ウィズ・ア・バブル」からメモ。

アメリカの住宅バブルの発生に重要な役割を果たした「低金利」をもたらした要因としては、FRBの政策のほかに「構造要因」も考えられる。グローバル化の進展により、新興国は高い成長率を実現し所得も拡大、それに伴い貯蓄が顕著に増加する。そのことが、グローバル金融市場に潤沢な資金の状態をもたらしたのである。

1997年のアジア通貨危機以降、アジアの新興国は資本輸入に依存した経済発展を嫌い、国内投資を抑制してまでも国内貯蓄の余剰を創出して、それを海外に輸出するようになった。これにより世界経済は「貯蓄過剰」の状態となり、世界金利が下落し、世界各地における住宅バブルを生んだ。

アジア新興国が投資を抑制すると、世界経済には「需要不足」による不況圧力が生まれる。世界各地の住宅バブルによる消費の拡大は、不況圧力を打ち消した点においては世界経済にプラスだった。

ジャン・ティロールの「合理的バブル」の研究によれば、「動学的効率性の条件」(その経済における投資収益率が成長率を上回るという条件)が満たされない時(投資がすでに過剰で、投資収益率が経済成長率以下に低下している状態)には、バブルが経済効率の改善につながりうる。すなわち、バブルは真正な投資に対する代替的な選択肢になることを通じて、資本設備を適正な水準まで縮小させる。これにより真正な投資の収益率も改善されて、「動学的効率性の条件」が満たされる状態を回復することになる。バブルは経済効率を改善させ、「動学的効率性の条件」を回復させるための「必要悪」、あるいは自己調整能力といえるかもしれない。

リカルド・カバレロによれば、新興国における投資対象の不足という根本問題が、「金融資産」市場における「超過需要」(「投資対象への需要」に比べて「投資対象の供給」が不足する)の状態を生み出す。世界各地におけるバブルの頻発は、その傾向を解消する(真正な投資対象が不足するために、代替的な投資対象となるバブル資産を次々につくり出す)ための経済の自然な反応である。

・・・実物投資の対象が見当たらない時に、不況を回避するためにもバブル投資が必要になるということなのかも知れないが、かつて実物投資からバブル、バブルから実物投資へと上手くリレーされたという覚えは無いし、バブルもやがては崩壊して経済に悪影響をもたらすというのは世界経済が何度も経験したところ。それでも金融資本市場における「超過需要」の状態が続くならば、バブルは死なず、ということになるのだろうか。

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コメント

竹森俊平の上記本は読んでませんが、
下のURLの報告書論文では、
グリーンスパンが、長く低金利政策を続け、結果として
株式バブル(ITバブル)を住宅バブルに置き換えたことは、より深刻な結果を招くと
論証したロゴフの議論にも重きを置いています。

http://www.esri.go.jp/jp/archive/hou/hou040/hou33-04.pdf

投稿: 屋台の主 | 2009年1月 4日 (日) 11時02分

屋台の主さま、ご教示有り難うございます。

投稿: donald | 2009年1月 4日 (日) 22時30分

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