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2008年10月18日 (土)

リスクテイクバブル

昨年夏、日経新聞紙上で「リスクテイクバブル」なる概念を唱えていた小幡績・慶應大学大学院准教授が、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)で自説を詳細に展開。リスクテイクバブルは、構造的に市場に組み込まれている21世紀型のバブルであるという。その根本にある要素として考えなければならないのは、「証券化の本質」と「投資家と運用者の分離」。まずは「証券化」についての要点。

「証券化」の本質は、資産の「商品化」である。資産は証券化により、「市場価格」の付く投資商品となる。証券化により生み出された投資商品は、その資産の特性の全てが、リスクとリターンとして標準化されている。このため多くの投資家が買い手として現れるので、流動性が飛躍的に高まる。その結果、売りたいときに売れないという流動性リスクは減少する。

次に「投資家と運用者の分離」について。

現代金融市場において、投資家と運用者は別の存在である。これを株式会社の「資本と経営の分離」に倣って、「資本と頭脳の分離」と呼ぼう。頭脳たるプロの運用者は、顧客である投資家の資金引き揚げの可能性に制約され、取るべきでないリスクを取ってしまうという罠に陥る。一方、投資家も、資金を預けた運用者の能力について、結局はパフォーマンスの結果だけで判断して、過大なリスクを取りがちなファンド運用者に資金を預けてしまうこととなる。
この結果、ファンドマネージャーたちは、取るべきでないリスクを過大に取ってしまい、これにより金融市場全体で、リスクテイクが過多になってしまう。これが、リスクテイクバブルの第一の要素である。これに、証券化による投資家の拡大と流動性の増大が価格上昇につながるという連鎖が、第二の要素として加わることにより、リスクテイクバブルは膨張する。

さらに、バブルにおける運用者の行動について。

バブルが発生しているとき、ライバルに勝つためにも運用者はバブルに乗らざるを得ない。しかも目いっぱい乗らないと意味がない。ほとんどのヘッジファンドは、いわゆるレバレッジを効かせている。借金をして投資額を膨らませているのだ。運用の利回りがプラスのときは良いのだが、バブルが崩壊した瞬間に地獄となる。マイナス幅が倍増するだけでなく、借金の担保に提供した証券も値下がりして、即座に借金返済を迫られるためだ。こうして、投資した証券の投売りが始まる。流動性がない資産は売ろうとしても売れないので、流動性のある証券など他の資産まで投売りされることになる。
この負のスパイラルにより、世界の金融市場全体が同時多発的に暴落に見舞われる。現代の金融市場は、「金融恐慌の日常化」という可能性を孕んでいる。

・・・激しい運用競争に打ち勝つために、リターンの極大化を目指す運用者たちは、バブルの中でレバレッジを目一杯効かせてリスクテイクに踏み込んでいく。そしてバブルが崩壊するや否や逆回転の動きが広がり、あらゆる資産の投売りが加速する。現在の極端に異常とも思える世界の株安も、まさにその現れと見るのが妥当なのかも知れない。

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