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2008年10月28日 (火)

ドル帝国の終焉

水野和夫・三菱UFJ証券チーフエコノミストは、グローバル化は止まらないだろうが、混沌とした時代は続く、と見る(「週刊金融財政事情」10/27・11/3合併号)。以下にメモ。

新自由主義は、マネーが国境を自由に越えて動く世界を構築するのに最適なイデオロギーだった。95年以降のアメリカにおいて「強いドル」政策が、国際資本の完全移動性を実現させることによって「ドル帝国」を実現させた。95年からパリバ・ショックの07年8月まで「世界のすべてのおカネはウォール街に通じていた」のである。この間、世界の金融資産は102兆ドル増加したことになる。

ところが、サブプライムショックは収まるどころか、08年7月になると米住宅金融公社2社の経営危機が表面化した。外国人投資家はアメリカから256億ドルの資金を引き揚げてしまった。07年8月のパリバ・ショック時の引揚げ額は過去最大の377億ドルだったが、実は今回のほうが米「ドル帝国」にとっては深刻である。現在は米銀が外銀から資金調達できなくなり、米資本は外国から資本を回収せざるをえなくなったからである。

サブプライムショックは08年7月以降、ドル帝国の資金繰り難という新しい局面に入ったのである。経常赤字額を上回る外国資本の流入を図り、その差額を投資利回りの高いアジアなど新興国や日本の不動産に投資する米「ドル帝国」の根幹が崩れているのである。

米金融システムを安定化させるには、国有化も辞さない米銀への公的資本注入と同時にドル防衛が不可欠である。
不良債権買取りに公的資金7000億ドルを投入し、新たに必要となる米銀への公的資本注入
を加えれば1兆ドルを超える国債が新たに発行されることになる。現在、アメリカの財政赤字は年間4500億ドルであり、それに1兆ドル以上の国債発行が追加されれば、外国中央銀行のドル買い介入がないとドルが急落する懸念がある。米金融システムの安定化とは、外国中央銀行のドル買いがあって初めて成功するのである。

「ドル帝国」が凋落しても、グローバル化が止まるわけではない。新自由主義にかわる新たなイデオロギーが出てくるまでは、混沌とした時代のなかで、経済の中心が先進国から新興国へ移行することが予想される。

・・・今後の世界経済は、「ドル帝国」崩壊の悪影響を最小限に留めるための措置を講じながら、調整を続けた後に新興国が中心的な位置を占める、方向性としてはそんな感じ。経済データを踏まえつつ、ひとつの思想とも呼べるような現実認識を呈示する水野氏は証券業界の宝です。

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