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2008年10月19日 (日)

株主資本主義の欺瞞

強欲資本主義 ウォール街の自爆』(神谷秀樹・著、文春新書)の「第五章 資産運用ゲーム」からメモ。

損益計算書は、「トップ・ライン」とも呼ばれる「売上げ」から始まる。これはお客様に支払っていただいたお金だ。次は製品を生産するコストである「製造原価」で、仕入れ先に支払わなければいけない金額を表す。以下は、たくさんの経費項目が並ぶ。従業員に支払う賃金、銀行に支払う金利もこれらの項目にある。売上げからこれらの諸経費を差し引いたものが「税引き前利益」である。この利益から税金を支払うと、「ボトム・ライン」、すなわち株主に配当できる金額および役員報酬に充てる金額が出てくる。

この損益計算書は、企業活動のあるべき姿を実によく現している。
まずは「何よりもお客様(売上げ)」である。お客様があってこそ、仕入先や従業員にきちんと支払いをすることができる。借金をしていれば金利を支払い、元本も返済しなければならない。儲かっていれば税金を納める。こうした「社会的責任」を十分に果たして、初めて配当と役員賞与に充当するお金が出てくる。

しかし、ファンド・マネージャーは、そのようにはこれっぽっちも考えない。
近年では欧米流の会社は株主のもの、株主重視という考え方が広がっている。経営の教科書的にいえば、企業が将来
どれだけのキャッシュフローを生み出すかを評価したものを「企業価値」といい、そこから負債を差し引いたものを「株主価値」という。従って「株主価値」の最大化を目指すことが優れた経営の目標であり、ファンド・マネージャーの興味もここにある。もっとも、それは歪んだ発想である。

彼らに興味があるのは、「株主の利益」と「自分の収入」だけなのだ。会社は自分たちだけのものであり、自分たちの儲けを最大化するために「トップ・ライン」と「ボトム・ライン」の間にあるすべての支払い義務をいかに圧縮するかに熱心に取り組む。給料を減らす。社員を減らす。仕入先を泣かす。最大限に借り入れてレバレッジを効かし、支払い金利を膨らませ、税金は極力圧縮する。彼らにとっては、これが「株主価値」を高める行為なのだ。通常の人であれば、これは文字通り「本末転倒」と考えるのではないか。「株主資本主義」は欺瞞に満ちている。

・・・ヘッジファンド化した投資銀行の滅亡に伴い、ファンド資本主義的な原理である株主価値経営の在り方にも、強い批判の目が向けられるだろう。冷戦後のグローバリズムを主導してきた米国型資本主義に対する全面的な見直しは避けられない。

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