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2008年9月18日 (木)

裁定型金融の「破綻」

リーマン・ブラザーズの破綻は、投資銀行に解体的出直しを迫っている、と指摘するのは池尾和人・慶応義塾大学教授。本日付日経新聞「経済教室」からメモ。

世界的に金融資本市場の自由化が開始された1980年代以降、しばらくは資産価格に関して多くの歪みが存在し、裁定型金融(流通過程での価格の差異に利益の源泉を求める、要するに「安く買って、高く売る」)で利益を上げる余地は大きかった。
同時に、従来は適切な取引手段がなかった種々のリスクに関し、それらを取引対象化するような、デリバティブに代表される金融技術革新が実現した。こうした革新の当初、米国の投資銀行は、まさに先駆者として各種のデリバティブ市場の開拓を主導し、価格体系の歪みの鞘を抜くことで多額の「創業者利得」を稼いできた。

しかし裁定が成功して、価格体系の歪みが解消されていけば、裁定取引でそれ以上の利益は上げられなくなる。裁定型金融のビジネスモデルは成功したがゆえに、世界的な金融資本市場の効率化をもたらすとともに、自らの収益機会を枯渇させることになっていった。

だが収益機会が乏しくなる中でも、米国の金融サービス産業には依然、高収益を求める圧力がかかり続けた。こうした状況の中で、高収益を維持するため、(金融商品のリスク特性を隠蔽する、あるいは金融商品や取引の内容をいたずらに複雑化することでリスクの過小評価をもたらす等の)「不公正取引」が増殖していったと考えられる。それが顕在化したのが、今般の信用市場危機であるということができる。

裁定型金融のビジネスモデルに基づく米国の金融サービス産業が、今後もこれまでと同様の高収益性を維持できるとは考えがたい。裁定型の金融活動は、その本来的な存在意義に見合う規模と範囲に縮小せざるを得ないだろう。

・・・このような高い見識を持つ先生が、日銀審議委員の候補者で終わったことを改めて残念に思う。日銀人事を政争の具にした民主党の愚に呆れる。

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コメント

この経済教室の論文には反対ではないのですが.....

池尾さんは、日本のような間接金融中心の金融システム
では、決済機能を持つ預金を供給する銀行がリスクを集
中的に負担するので、金融危機を招きやすい。アメリカ
のような市場型の金融システムでは債権を証券化し、そ
の証券を多数の企業や家計が保有するので、リスクが広
く薄く分担されることになり、金融危機は生じにくいと
いう議論をしていたと記憶しています。この論文とは、
正反対の方向を向いた主張です。

どうも、そのときどきによって主張を変えているように
思えて信頼できない印象があります。

投稿: 通りすがり | 2008年9月25日 (木) 01時45分

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