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2008年5月25日 (日)

『クアトロ・ラガッツィ』(上巻)

入院中に『クアトロ・ラガッツィ』(若桑みどり・著)を読んだ。何しろ病院では時間があるだろうから、何か長いものを読もうと思ってあれこれ迷ったが、結局その時新刊で出ていた本書(集英社文庫、親本は2003年発行)を選んだ。上下巻で1000ページを超える。

副題に「天正少年使節と世界帝国」とあるように、ヨーロッパに派遣された4人の少年(クアトロ・ラガッツィ)を中心に、イエズス会宣教師ヴァリニャーノやフロイス、キリシタン大名大友宗麟、織田信長、豊臣秀吉、ローマ教皇グレゴリオ13世などの人物について、膨大な資料を駆使して語りながら、当時の日本とヨーロッパの関わりを描き出していく。

少年使節の派遣を決めたヴァリニャーノ(イタリア人、「日本史」で知られるフロイスはポルトガル人)は、当時のヨーロッパ人には珍しく開明的な人物だった(第二章 われわれは彼らの国に住んでいる)。ルネッサンスの人文主義的教養人である彼は、異なる文明である日本、中国の文化に敬意を払い、西洋人のやり方を押しつけることなく、キリスト教の精神を育てようとした。

戦国時代好きには、やはり信長の話、特に馬揃え(軍事パレード)の話が面白く感じられる(第三章 信長と世界帝国)。フロイスが伝える馬揃え。「装飾された競技場には飾り具をつけた馬にまたがり、できうるかぎり華美ないでたちの700人の武将と、諸国から見物に来た20万人に近い群集が集まった」。

柴田勝家が緋色の衣装を選んだら、信長に「待った」をかけられたらしい。「権六、その色はわしのものじゃ。控えい!」「は、ははーっ!」てな感じか?

信長は招待した宣教師たちのために高台の特等席を用意した。馬揃えに先立って宣教師からは、金の飾りを施した濃紅色のビロードの椅子が贈呈されていた。「信長はこの椅子をことのほか喜び、自分の入場に勢威と華麗さとを加えるために、それを4人の男に肩の高さに持ち上げさせてみずからの前を歩かせた。信長は行事の最中、彼の身分を誇り、その偉大さを誇示するために、一度馬から降りて椅子に座ってみせ、ほかの人間とは異なった人間であることを示した」。

著者は書く。信長の行った「この一大デモンストレーションは、内裏、公家、諸侯、民衆に向けて自分の偉大さを示すものであったと同時に、世界に向けて、日本の国王が彼であることと、その偉容とを知らせようとしたものである」。

信長は我らのことを世界に伝えよとばかりに、宣教師たちをスポークスマンに仕立て上げたのだろう。例の「安土城図」屏風もヴァリニャーノに与えて、実際にこの屏風は天正少年使節と共にローマまで運ばれた。世界に張り合おうとする気概を持つ信長と、日本を文明国と認めたヴァリニャーノの邂逅が、少年使節派遣というアイデアを生んだのだ。

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