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2008年5月24日 (土)

『孤独のグルメ』(新装版)

P1020366_2 マンガ『孤独のグルメ』(扶桑社)が新装版としてお目見え。旧版の発行は1997年10月なので、単行本としては10年ぶりの復活となる(写真の左が旧版、右が新装版)。このほか文庫版は約9万部のロングセラーとか。

タイトルに「グルメ」とはあるけれど、主人公の独身らしき中年男、井之頭五郎が仕事の合間に向かうのは別に高級店でもなんでもなくて、食堂や定食屋の類が中心だったりする。そこで語られることも、食べ物そのものよりは、独りで食事をするというその行為にまつわる心情に重点が置かれていて、いわば「B級グルメの独白」という趣。一話8ページという短さの中で、日常的な食事に対するささやかな期待や満足感、あるいは微かな逡巡や戸惑い、見込み違い等々、独りで何かを食べる際に自ずと生じるさざ波の様な心理の綾が淡々と綴られていく。一見地味な作品ながらロングセラーになっているのは、このマンガの持つ優れた短編小説の様な味わい深さを多くの人が認めている証だろう。

主人公が語るこの作品の哲学ともいえるセリフ。

モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず
自由で 
なんというか救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで……

以下のセリフもワタシの様な中年単独者の心の琴線に触れたりする。

輸入雑貨の貿易商を個人でやっている俺だが自分の店はもっていない
結婚同様 店なんかヘタにもつと守るものが増えそうで人生が重たくなる
男は基本的に体ひとつでいたい

あるいは、回転寿司の店で座ったのが注文の通りにくい席で何か切ない気分になるとか、新幹線の中で発車前に弁当を広げる乗客が目に付いて「どうしてああせっかちなんだろう」と思うとか、それあるよなあと色々共感する場面に事欠かないマンガである。

この作品で描かれる食べ物(とシチュエーション)の中では、秋葉原でカツサンドと缶コーヒーを買って戸外(広場の片隅)で食べるというのが、ちょっとさみしいけれど解放されてもいるというか、しみじみ感もあっていいな、と思った。あと、渋谷で主人公が「並んで食べるのは嫌だな」と入らなかったけれど、「喜楽」のラーメンは好きだな。

今回の新装版では新作(特別篇)が追加されているが、そのテーマは病院食。自分も最近入院を経験したので、個人的には結構リアルだった。作中に登場するカレイの煮付けではなかったが、魚とご飯そしてジャガイモの味噌汁の組み合わせは自分も頂いたし、朝食はコッペパンではなく食パンだったが、紙パック牛乳とバナナの組み合わせも出てきた。確かに最近の病院食というのも、まずくはないですね。

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