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2007年11月 4日 (日)

カミュ「カリギュラ」

カミュの「カリギュラ」が蜷川幸雄演出で上演される(7日から渋谷・シアターコクーン)ことを知った時、今なぜカリギュラ?しかも「世界のニナガワ」で?と正直感じた。その昔、清水綋治企画・主演の舞台を観た人間としては、ちょっと興味を持ったのも事実だけど、主演男優がいかにも若い(ただ今売り出し中のイケメンらしいけど、余り興味無いっす)ものだから、さてどこまでやれるのかと・・・。で、とりあえず昔話をしておきますか。

P1020278 清水綋治が企画・主演した「カリギュラ」は1984年2月、下北沢の本多劇場で上演された。写真はその時のパンフレット。・・・しかし正直パンフを買っていたとは忘れてた。本棚の引き出しには意外な物が入ってるもんだ。(苦笑)
共演は秋川リサ、塩島昭彦ほか。演出・岡村春彦、上演台本・小澤僥謳。何しろ20年以上も前なので、細かいことは覚えていないが、清水綋治の思い入れの強さは伝わってくる舞台だった。清水演じるカリギュラが吐き出すように語る「男が泣くのは物事があるべき姿にないからだ」というセリフが妙に記憶に残っている。

話としては、愛人の死によって、「人間は死ぬ。だから人間は不幸だ」という「真理」を心に深く刻まれた若き皇帝カリギュラが、この「真理」を人々に教え込むために自らの権力を行使する暴君となるものの、最後は「生きて、幸せになる」ことを望む親衛隊長のケレアを中心とした反乱者たちに殺害されるという、いかにもカミュ的なテーマが盛り込まれた芝居。(「シーシュポスの神話」には、「幸福と不条理とは同じひとつの大地から生まれたふたりの息子である」と記されている)

1945年初演のカリギュラ役はジェラール・フィリップ。後の伝説的映画スターだ。
フィリップがガンのため36歳の若さで世を去った1ヶ月余り後、1960年1月4日にカミュは46歳で自動車事故死・・・嗚呼、何といふことでせうか。

若い頃に「カミュ全集」全10巻を古本屋で買ったけど、どうも自分はカミュの作品に凄く感動したとか、そういう覚えは実は余り無く、なぜか作品よりも「カイエ」と呼ばれた創作ノートが好きだったりする。そこに綴られた文章が醸し出す、切実なセンチメンタリズムの雰囲気に浸っていたのだな。「カイエ」は昔、新潮文庫に「カミュの手帖」として「太陽の賛歌」「反抗の論理」の2冊が入っていた。未刊部分を含めた合本も1992年に刊行されたが、活字二段組の書籍の形よりは、適当に開いたページから拾い読みできる文庫本の方が「手帖」らしい感じ。文庫復活を望んでも可能性は低いとは思うけど。

結局自分は、カミュについては作品を読むというよりも、もっと直截的な作家の声を求める、いささか不真面目な読者だったと言うほかない。全集の中でも主に目を通したのは、短い時評やインタビューなど「発言」の類だったし。でも、カミュが今テレビのキャスターとかコメンテーターをやってたら、結構人気あるんじゃないかなあ。(何だそれ)

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コメント

ベテラン男優の清水綋治ですか。悪役が多かったような気がします。sun

投稿: 台湾人 | 2011年1月10日 (月) 18時12分

悪役も含めて性格俳優という感じでしょうか。若い頃は「危険な匂い」のする役者さんでした。

投稿: donald | 2011年1月10日 (月) 21時05分

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