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2007年9月16日 (日)

『平成男子図鑑』

「おやじ」になることなく大人になるということ。『平成男子図鑑』(深澤真紀・著)を読んで、そんなことを考えた。

この本のタイトルにある「男子」とは、おもに1970年代生まれの団塊ジュニア世代、すなわち20代半ば~30代半ばを中心とした男性を指す。豊かな時代に生まれ、旧来の男らしさにこだわらない、そんな彼らの考え方や行動スタイルを、「~男子」とキャラクター化して、著者は次々に紹介していく。いわくリスペクト男子、マッスル男子、オカン男子、チェック男子、ツッコミ男子、欧米男子、ロハス男子、スピリチュアル男子、ガンダム男子等々。全体的なイメージとしては、自分が大好きで、友だちや家族を大事にする、酒・タバコやギャンブルはやらず、欧米コンプレックスとも無縁で、情報のチェック能力に長けて、人間関係もケータイで整理するという、何ともスマートな感じ。

けれども、この世代は朝日新聞のいう「ニュー・ロスト・ジェネレーション」でもある。10代でバブルがはじけて、20代では「失われた10年」を生きてきた彼らはこれからも、「将来や希望の見えない日本」を生きていかなければならない。そんな彼らは、所ジョージ、関根勤、高田純次といった「テキトーおじさん」に憧れている。それは、不安を抱えながらも、「ほどよく」生きていこうとする男子のサバイバルのひとつの形なのだ、という。

おやじや女性にはウケが悪い平成男子の面白さを伝えるために、著者はこの企画を立てたそうだ(当初はウェブサイト連載)。「男がダメになった」「いい男がいない」と嘆く声が多数派らしい今の日本社会の中で、著者は彼らを温かい目で観察し、足りない部分についても優しく示唆する。そんな著者も本の最後で、いつまでも男子はそのままではいられない、男子はどんなおやじになるのだろうかと、彼らの将来を案じて?いる。

しかし、これからの男はおやじになることなく、男子のまま大人になればいいのではないだろうか。大人とはどういうものか、実は本書の中で著者もちらほらと書いている。

たとえば、若さや健康を保つことに価値を見出すマッスル男子に対して、著者は「若さからきちんと降りることも、人生の大事な仕事です」と諭す。あるいは、母親を大事にするオカン男子は、「母親から受けてきた愛情を、きちんと返す相手を自分で見つけること」で大人になれる、と説く。さらに、前世や霊や魂をなんとなく信じるスピリチュアル男子について、彼らは「生きていくことの意味や物語を強く求めていますが、実際の人生には意味のないことや、理不尽なことのほうが多く起こるもの」として、「それを、きちんとわかることが大人になるためにはなにより大事なことなのです」と指摘する。

おやじの生き方を拒否する男子。これまでの男らしさにこだわらない彼らの在り方は、当然社会の変化を映しているのであり、それに対して不平・不満・グチを言うおやじや女性は、世の中の変化に鈍感なのだろうと思う。彼らの不満はつまるところ若い男たちの頼りなさに行き着くのだと推測するが、こんな先の見えない世の中で自信を持って生きることができるとしたら、その方が余程おかしいことのように思える。男子たちには、おやじの生き方を「自信を持って」拒否し続けてもらいたい。そして、おやじとは別の形で大人になってもらいたい。

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