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2007年9月24日 (月)

『下流社会 第2章』

ベストセラー『下流社会』の続編、『下流社会 第2章』(三浦展・著、光文社新書)が出た。前著に対して調査サンプル数が少ないと批判されたことに応えて、より大規模な調査によるデータ収集を行っている。もっとも、「あとがき」の中で著者は、「サンプル数が少なくても、さほど間違った分析はしない」と自信を示してはいるけど。実際データ量が多くなったからといって、前著より精緻な印象があるかといえば、そうでもないしね。

本書の中でも「下流ナショナリズム」やら「下流女」、あるいは雑誌の読者別階層意識の分析といった部分は、まあ相変わらず半分与太話みたいなものである。むしろこの本では、若い男たちの下流意識の底に流れる労働観、すなわち正社員に対する懐疑的な意識を、あらためて炙り出してみせたことに意義がありそうだ。以下は第3章「上流なニート、下流な正社員」から引用。

非正社員は、将来的には正社員になることを希望している人が多い。しかし、すぐに正社員になりたいわけではない。なぜなら、正社員になると束縛が多いからだ。だから、もし非正社員のまま待遇が改善されるなら、非正社員のままでもいいと思っている。あるいは、正社員でも束縛の少ない働き方ができる会社があるなら、正社員になってみようかと思っている。

フリーター大量発生の当初、豊かな社会はまともに働かなくてもすむ若者を大量に生み出したとの見方があった。それが、たとえば玄田有史教授の実証的研究などから、長期不況を背景にした新卒採用抑制という構造的要因が指摘された。そしてまた今回、やっぱり若者は働きたくない、少なくともこれまでのようなスタイルでは働きたくないという意識がある、という見方が示されたことになる。若者が正社員に抱くイメージはかなり酷いらしい。以下は「新しい正社員像を描くべき時代」と題された結語的部分から引用。

つまりこういうことだ。これまでの制度では、正社員と非正社員の格差が非常に大きい。しかし、正社員は残業が多く、過労であり、ストレスに悩んでいる。だから非正社員は正社員になることに躊躇する。
だとすれば、正社員と非正社員の間に現在ある大きな溝を、もっと埋めていく必要があるのではないか。
個人のその時どきのライフスタイルに応じた働き方が可能になるならば、多くの人は不安定な非正社員ではなく、正社員という立場を選ぶであろう。
今の時代に即した夢と希望のある新しい正社員像が描かれるべきだ。

という著者は、現実の試みとして、ユニクロの「地域限定正社員」を高く評価している。いま柔軟な雇用形態や労働スタイルが、求められていることは間違いないのだろうが、具体的な提案や施策は、著者ではなくまた別の専門家が考えることなんでしょうね。

何にせよ非正社員の置かれている状況が問題化している今、実は正社員の在り方もあらためて問われているのだ。

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コメント

三浦センセイは、相変わらずお元気なようで。
統計学や社会学をかじった人物なら、三浦センセイの分析は突っ込み所だらけなのですが。20年後か30年後に未来の学者が三浦センセイの分析を基本文献として扱うか、キワモノして見るかが楽しみ。

投稿: 秘密組合員 | 2007年10月 1日 (月) 22時11分

秘密組合員様、三浦氏の本がベストセラーになったのは、やはり「下流社会」という臆面もないネーミングのせいなのでしょうね。実のところ「下流」意識の内実は、それ程明快には示されてはいないような気がします。

投稿: donald | 2007年10月 1日 (月) 23時16分

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