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2007年8月19日 (日)

『パール判事』を読む

先週初め、NHK特集で2夜続けて「東京裁判」関連の番組を見た(13日の「A級戦犯は何を語ったのか」、14日の「パール判事は何を問いかけたのか」)ものだから、とりあえず購入していた『パール判事 東京裁判批判と絶対平和主義』(中島岳志・著)をざっと読む。同書の第三章「パール判決書」からメモ。

パールは「通例の戦争犯罪」については国際法上の意義を認め、その罪を東京裁判で審議することを肯定した。しかし裁判所憲章第5条に示された「平和に対する罪」と「人道に対する罪」に関しては、国際法上の根拠がないとして、その罪そのものを否定した。これは罪刑法定主義の原則に関わる問題である。「事後法」による遡及処分は、近代法の原則からの逸脱であり、法によって支えられる秩序を根本から覆しかねない。

パールが繰り返し指摘したことは、張作霖爆殺事件から日米開戦にいたる歴史過程には一貫した方針などなく、指導者による共同謀議なども存在しなかったということである。日本の為政者たちは、検察側が立証しようとする「共同謀議」などしていなかった。「孤立した事件」が巧みにつなぎ合わされ、一貫した侵略政策によって日本が運営されていたかのように仕立て上げられているだけである。

パールが厳密な意味での判決対象と見なしたのは、あくまでも「通例の戦争犯罪」のみに関してである。
パールは、南京虐殺をはじめとする日本軍の虐殺行為を厳しく非難し、それを事実と認定した。しかし、これらの事件に関する刑事上の責任をA級戦犯容疑者に問うことは、証拠不十分のため不可能であるという結論を出したのである。

・・・パール判事は、東京裁判の被告人は全員無罪であるとの結論を下した。「道義的な戦争責任と法的な戦争犯罪は別」という立場を堅持した上での結論であることを考えれば、パール判決書(反対意見書)を「日本無罪論」と呼ぶのは確かにミスリードの恐れがある。それは東京裁判そのものへの批判であり、たとえば「東京裁判無効論」とでも呼ぶべきものではないかと思われる。

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