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2007年5月11日 (金)

『日本の戦争力VS.北朝鮮、中国』

豊富な知識を備えているのはもちろん、提言力においても優れた軍事専門家・小川和久の新著『日本の戦争力VS.北朝鮮、中国』は、軍事力も含めた日本の危機管理能力の在り方を分かりやすく説いている。以下にいくつかメモ。

(北朝鮮という国の最大の脅威とは何か)
それは北朝鮮の体制崩壊であり、そのことが引き起こす大量の難民の発生、軍事組織の混乱などである。また、まず北朝鮮を押さえ込むのか、あるいは核開発で北朝鮮と協力関係にあるイランを屈服させるのか、その優先順位もしくはバランスが今後重要なテーマになってくる。

(日本は中国に対してどう向き合えばいいのか)
アメリカの対中戦略(建設的関与)が参考になる。それは平たくいえば、「中国を経済的にはアメリカの利益となる国に、軍事的には脅威とならない国にしていく」という戦略であり、そのキーワードは「民主化」である。中国をアメリカなしには生きていけない国にする、そのための必要な道具(強制力)としてアメリカの軍事戦略があり、日米の同盟関係がある。

(日本の憲法と自衛隊の位置付け)
自衛隊は他国を壊滅させる能力、つまり国家としてのパワー・プロジェクション能力(戦力投射能力)を備えていない。そして今後も、日本は現在の「自立できない軍事力」を日米同盟で補うにとどめるしか現実的な道はない。だからこそ日本は今、「自立した軍事力を持たず、戦力投射能力なき軍隊を今後も維持する」ことを宣言するとともに、恒久的な「安全保障基本法」を整備していく必要がある。憲法に「侵略戦争は放棄する」と定めたうえで、安全保障基本法に「日本が持つ戦略投射能力のない軍事力とはどういうものか」を書き込むだけでも、これまで曖昧模糊としたまま棚上げにされてきた問題がクリアになる。

(危機管理の基本について)
日本には「平和や安全はコストである」という発想がない。安全は最初から見込んでおくべきコストなのだ。危機管理の「基礎問題」、それは防災や医療であり、国防やテロ対策は「応用問題」である。まず必要なのは、「過去の戦争や災害に備える」ことだ。つまり過去に起こった戦争、テロ、大規模災害などの危機的状況について、可能な限り事例を洗い出し、類型化して、それに対してシナリオを備えること。「この事態には、こう対応をする」というモデルを確立すると同時に、起こる可能性や想定される被害額を見積もり、優先順位を付けておくのだ。

著者は「はじめに」の中で、「外交・安全保障に関心のあるむきにとどまらず、ビジネスマンが民間企業の経済活動に置き換えて活用してくださると望外の幸せである」と記しているが、たとえば「戦略的」という言葉の好きなビジネスマンには、以下のような部分が役立つかも知れない。
私たちに必要な戦略的思考とは、日本にもっとも望ましいビジョン(目的)を長期的視野に立って明確に描き、そこにいたるまでに必要な道筋と手立てを洗い出し、人材、組織、資源、技術、資金などさまざまな要素の最適な配分と組み合わせを考えて、実現のための方法を開発することでしょう。方法がわかれば、変化に応じて柔軟に対応しながら、狙いを外さずに決断を重ねていく。これが戦略的思考に基づいた行動です」

インタビュー形式で読みやすい本書から我々は、データに基づいた現実認識から出来ること、すべきことを導き出していく、小川流の冷静で着実なリアリズムを学ぶことができるだろう。

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